石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第三節 漢學(下)

空照、俗姓九里氏、越前の人なり。慶長二年空照足南郡波著寺に住して權大倘都たりしこと、白山宮寄進の額面裏書に見ゆ。元和五年利常地を金澤小立野に賜ひて波著寺を轉ぜしむ。同年六月空照利常の命を奉じて白山寺の鐘銘を作る。

  加州白山大神宮者。本地觀音圓通菩薩。而出現天神第七之宗庿伊弉冉尊。尊者天照大神之母君也。亦考
  記。丁元正天皇養老元年。感泰澄和尚之修驗。而垂跡於斯山。慈眼視衆生。誠哉。自爾以降。靈光耀
  今矣。仰猶餘者也。粤太守參議源朝臣利光公。發素願。命冶工。鑄洪鐘。欽致明信。伏乞冥助。尤可
  嘉尚矣。雲間昏鐘也。耳聞者。忽聞聲悟道。花外紅音也。眼睹者。必見色明心。唯庶幾令鳴之。警
  祀之送迎。緩打之。匡神樂之起止。寔其功用不遑縷陳者也。於是願主捧幣帛。祀日。君臣快樂。子孫
  寧。銘日。
 加州靈境  白山神精  鎭護國土  濟益民生  仰而可尚  經之以營  鎔範陳設
 梵鐘新成  筍虚高掛  蒲牢能鳴  塞山月落  豐嶺霜清  遺百八響  報長短更
 鍠鍠夢破  殷殷耳明  惟君所冀  懇祈致誠  武運延長  政治太平  徳被四海
 威及八紘

此等の詩賦、未だ佳境に到らず。況やその小序の如き、生硬難澁和臭紛々たるもの、もと是浮屠氏の作なるを以て然るを期せずして然るものか。葢し前田氏封を受けてより、緇流にして文辭を作れるもの、空照を以てその權輿となす。寛永石動山大宮坊に住して別當職に任じ、正保元年六月五日寂す。