石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第一節 學校

小學所は、明治三年十一月金澤にこれを開き、以て四民教導の基礎たらしめたるに起る。その一は卯辰山小學所といひ、卯辰山にありて前に集學所といへるものなり。その二は梅本町小學所といひ、その三は高岡小學所といひ、その四は河原町小學所といひて、皆同名の町にあり。その五は小立野小學所といひて飛梅町に在り。その六を小橋小學所といひ、淺野川小橋にありて設立稍遲れたり。小學所の教則は上下二等に別ち、講義を上等とし素讀を下等とす。前者の用書は小學・國史略・十八史略等にして、後者は孝經・大學論語・孟子等とし、外に習字・算術を教ふ。生徒入學の年齡は七八歳より十四五歳に及べり。小學所維持費は主として費より支出せりといへども、亦一面有志の醵金と生徒の納入とに待てり。小學所開始の當初に於ける諸規則左の如し。
小學所仕法
 小學所金澤市中に於て先五ヶ所御取開相成候事。
 卯辰山小學・梅本町小學・高岡町小學・河原町小學・小立野小學。但卯辰山小學は小學生入塾所の事。
 四民共小學所入學不差支事。
 入門日は毎月二日之事。但朝四ッ時より九ッ時を限る。
 入門之節常服、名札持參小學所え指出可申、頼紙面指出不及候事。
 教導科目、素讀並解讀・習字・算術。但朝五つ時より四半時迄素讀解義并算術、晝九半時より七時迄習字並文字誦讀・萬國國盡等を教ゆ。
 小學所教師學校より御指配、雜用は會社持にて、炭・疊等割符取立、餘は上より御引足の事。但入門之節束修及び毎歳七月・十二月謝儀二貫文宛差出、割符小學所世話役承り合指出可申事。但謝儀の儀は來七月より差出可申事。
 遠所等之者は請人相立、萬事受人引受可申事。
 小學所規則等は追て御布告に相成可申事。
 右小學所來十二月二日より取開之事。

小學規則
 毎日八字より十二字迄素讀・解讀並算術、一字より四字迄習字・語學並地理學を教ゆ。
 生徒上下二等に分つ。解讀を上等とし、素讀を下等とす。孝經・大學論語・孟子・書經・禮記を素讀す。各其席を分ち之を授く。
 上等生を三等に分ち、第一等を監讀とし、二等・三等を生頭とし、下等生三員又は五員の素讀を下授す。然る後教官之を再聽す。
 監讀・生頭兼て生徒の勤惰缺席等を督察す。
 毎月一次素讀生を試む。試業の上上等に入る。
 毎朝小學・國史略・十八史略等の書を上等生に口授す。教官之を主る。
 上等生文義粗通の後中學に入る。

小學掲示
 生徒昇堂及び退出の節、教官の席に就き一禮可致事。
 上等生を各席へ分配し素讀を下授せしむ。順番を以早く出べき事。
 小學所へ入學致候者他所の小學所へ轉學致候節、束修に不及事。轉學致候節、其ヶ所教官の印を受べき事。
 毎月三日午後梅本町小學所に於て素讀試業の事。
 上等生餘課を以て會讀致すべき事。
 算術は讀書稽古濟候者其席に就くべき事。
 生徒教師之使呼に從ひ萬事違背すべからざる事。
 御渡の品物大切に相心得べき事。
 掃除を主る者當日早出、机・火鉢及び湯水を取調、下駄等を齊整し、稽古相濟候はゞ堂上掃除可致事。
 放蕩之所業有之者退學可申付候。

小學生徒心得
 入學日毎月二日の事。但入學の節歳附等の名簿差出べき事。
 自分持參の品名札附置、紛亂致間敷事。
 缺席の節教官え其由を達すべし。
 正課中他席へ行を禁ず。緊要の事あらば教官へ其由を達す。
 座列容儀を正しくし、書籍等取亂す間敷事。
 生徒輪番を以て掃除を主るべし。監讀之を督す。
 萬端教師差圖に從ひ、我儘の行状有間敷事。違背する者退學可申付事。
 朋友切磋之道、遜讓を旨とし聊も爭論致べからず。
 天長節及び一六・佳節等放課の事。

小學舍中規則
 訓導・訓蒙各一員寄宿し、生徒及び舍中諸件を總轄す。
 第一等生を監讀とし、生徒の勤惰を督察す。
 上等生を生頭とし、各舍へ分配し、其舍の生徒を主る。
 昇堂及び起臥・食用等總て撃柝に從ふべし。昇堂の節上等生宜く同舍生を率ゆべし。
 各含毎日輪番を以て堂上等を掃除し、毎月一次輪番庭前を掃除す。
 毎日晡時休課。
 病氣等にて退舍十五日に滿れば等外へ出す。三十日に滿れば放す。

小學掲示
 毎日掃除、生頭之指圖に從ひ清淨に致すべき事。
 生徒出入の節會計所の木札懸卸失念有べからざる事。
 食事の節生徒食堂へ相揃食用の事。教師は自分舍にて食用の事。
 生徒昇堂後雜事掛火之元可見廻事。
 會計月算は濟算後五日を限り可差出事。
 親類等用事有之時應接舍に於て對談可致事。
 禁足の者は禁足舍に於て謹愼有べき事。
 病氣及び忌中之節禁足舍に於て保養等可致、尤便用之外出舍を禁ず
 休日の節、前日の放課後出舍、當日七つ半時歸舍の事。

小學舍生心得
 生徒相互に親睦隔意有間敷事。
 御渡の書籍及び器械等大切に相心得べき事。
 諧譃・爭論等決して致す間敷、若爭論に及び候はゞ是非を擇ばず双方罰すべき事。
 食堂座列は席順を以て相立可申事。
 猥りに他舍え相集り申間敷事。
 外出並歸塾之節教官及び會計所へ可相達事。
 門限朝六つ時より暮六つ時迄の事。
 舍規に違背する者は三日禁足、禁足三度に至れば放す。
 生徒不法の事あらば生頭より其由を教官に達すべし。若し達せざれば生頭の落度たるべし。
 貨幣並無用の翫具等一切所持致間敷事。
 舍中飮酒を禁ず
〔金澤市教育史稿〕