石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第三章 學事宗教

第一節 學校

學は士分以上の子弟の教育機關なるが故に、士分以下のもの若しくは農商の徒にして文字を學ばんとする時は、寺子屋に就かざるべからざりき。凡そ寺子屋は、その師匠たる者隨意に之を開設し、の規則によりて何等の制限を加へらるゝことあらざりしが故に、僻陬の地に在りては神職・僧侶又は醫師にして本業の傍之に從事するもの多く、農商の資産に富み稍餘暇ある者もまた父兄の依頼によりて開設せり。就學者の數は概ね寡く、特に農村に在りては三冬積雪の間のみその師の與ふる手本に就きて讀方を受け、併せて之を臨摹するに止り、それすら社會的地位の中流に住するものに非ざれば爲す所にあらざりき。但し城下その他の市街地に在りては大に趣を異にし、商工の子弟概ね平易なる讀・書・算を解し得るに至るまで寺子屋の教育を受け、士人の子弟も亦必ず就きて書道を修めたるが故に、入學者頗る多く、從ひて少年の教導を專業とし、或は之を世襲するものすらなきにあらざりき。