石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第二章 儀式慣習

第二節 風俗

歳末に當つて藤内非人の來りて米錢を乞ふ者亦多し。その師走狐と稱するものは、白布を以て全身を包み、又尾を垂れ、狐の面を被り、『來たわいな〱、師走狐が飛んで來た、一文もらへば來年までこん〱。』といひ、てんや尾右衞門は、男裝したるもの餠を搗く状をなし、女裝したるもの餠を返す状をなす。その唱詞に『てんやの尾右衞門、餠搗やどこや、餠搗やこなた、權太餠や飛びつく、大豆餠や吸ひつく、千貫萬貫萬々貫。』と囃す。てんやは店屋の義なれども、金澤にては餠の賃搗をなすものをいひ、權太餠は粳と糯とを交へて製したる餠なり。その他チヨロケン坊主は、大なる竹籠に眼鼻と舌を出したる口とを描きたるを全身に被り、兩側より腕を貫きて兩手に扇を持ち、他の一人は太鼓を以て囃し、シイヤイナは十五六歳の男兒にして、菅笠・呉蓙を着し、四ッ竹を囃す。皆唱詞あり。