石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第二章 儀式慣習

第二節 風俗

正月八日、醫師の家に神農祭を行ふ、一に藥師祭とも稱す。この日以後越前萬歳來り、城内下臺所に伺候して祀詞を述べ、下賜の物品を受け、次いで町會所に至りて技を演じ、後組を別ちて藩士の邸を訪ひ、大祿の者に對しては鏡餠を贈り、之が返禮として玄米一升と錢百疋とを受く。萬歳を室内に招じて特に演技を命する時は、別に祀儀を與ふ。越前萬歳は二十日に至れば、盡く城下を去るを例とす。或はいふ、往時は城中にても舞ひたりしが、勤儉の令ありし後之を廢せしなりと。金澤町人にも亦萬歳を演ずる者あり、之を地萬歳と稻へ、遍く家中を巡行することなし。又別に隱亡萬歳あり、男女相混じ、小太鼓にて噺し、心中物語の如きを謠物とす。金澤にては藤内を惣じて隱亡と稱することありて、この萬歳も亦近郊の藤内より出でしなり。越中二上村より出でたる猿廻が武家に至りて猿を舞はしむるも亦この月に在り。