石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第二章 儀式慣習

第二節 風俗

三ヶ日間には又藩士互に訪問して祝詞を交換す。賀客は必す座敷に入り、式臺より直に辭し去るが如きことをなさず。賀客を迎ふるものは、先づ熨斗三方を供し、客は雙手又は隻手を以て之を戴くが如き態を爲し、然る後祝詞を述ぶ。小祿の家に在りては、主婦自ら之を取扱ひ、紋服の上に小散を着て客に接す。末に至り、婦人の小散を省きて紋服のみとし、男子の熨斗目・麻上下は變じて服紗小袖・麻上下となれり。凡そ三ヶ日の間に在りては、士人の來往するもの秩祿二三千石以上は皆馬に乘り、職掌と食祿とによりて、先拂あるあり或はこれなきあり、兩若黨なるあり一人なるありて、必ず鎗と挾箱とを隨へ、小身の士分・與力・歩は小者一人のみを件へり。小者の着用する合羽は赭色なるを普通とすれども、年寄本多氏のみは栗色なるを用ひき。商人の豪富なるものは、亦桐油合羽を着けたる一僕を伴へり。