石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第二章 儀式慣習

第二節 風俗

元日より三日に至る間を三ヶ日と稱し、高祿の士家に在りてはその家來・給人等、皆主人に對して年頭の祝詞を述ぶるを例とす。この際に於ける主人の服裝は熨斗目・麻上下を用ひ、家來・給人も亦之に同じといへども、家格により扶持方の者にありては熨斗目を用ひざるも無きにあらず。醫師熨斗目・十徳を、中小姓小姓は服紗小袖を着く。町方に在りても、大商家の主人にして番頭・手代・丁稚の年賀を受くる者あり。奧向にありては、年寄衆の夫人は苞入に結髮し、笄を挿み、緋縮緬の上着に帶を前結びとなし、地赤又は地黒の裲襠を着く。老女も亦之に準ずれども、中老以下近習の者は紋服の上に小散(コヂラシ)を被ひ、御次以下は紋服のみを用ふ。而して老女・中老・近習等皆夫人に對して祝詞を述ぶるも、御次以下に在りてはその事なく、男子にして祝詞を述べ得るものは、獨り奧用人と醫師とあるのみ。人持以下平士の家に於いても、亦その地位に應ずる儀式を行へり。