石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第一章 制度法規

第三節 司法

禁牢者の附加刑の一種に入墨あり。凡そ累犯者に在りては、大に刑の裁量を加重すといへども、年月を經過したる後に在りては當路を欺瞞し、爲に容易にその累犯たることを發見し得ざるの憂あり。是を以て天明五年、藩侯前田治脩公事場奉行に令し、禁牢の期滿ちて釋放せらるゝものは、假令微罪たりとも必ず右前腕に入墨するの新法を初めしめき。その公事場に於いてするものは、腕を繞りて輪状を畫き、盜賊改方は竪の短線、町會所は横の短線を用ふ。但し同六年非常大赦の際には、入墨を施さずして出牢せしむることゝし、その翌年には幕府又は吉凶に際して赦を行ふ時も亦同例とし、寛政三年赦に會し死を減じて三ヶ所御構追放代刑に處せられ、禁牢の期滿ちて放免せらるゝものも、亦入墨を施さゞりき。同年他國者の入墨は、腕の内面に於いて輪を引違へ、以て領民と區別せり。