石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第一章 制度法規

第三節 司法

禁牢者にして羸弱在獄に堪へざる場合に在りては、その子の出願によりて代牢を許すことあり。或はその孝心を賞し、代牢を要せずして親の罪を赦したることも亦無きにあらず。寛政六年越中礪波郡下吉江村茂右衞門といふ者、非行ありて禁牢せられしが、子八兵衞代牢を請ひしを以て許され、茂右衞門は郡奉行に責付せられき。已にして茂右衞門の罪は三ヶ所御構追放代刑に當るとせられ、その年限中八兵衞の在獄すべきを命ぜられしに、茂右衞門は頽齡にして農務に從ふ能はざるが故に、寧ろ自ら實刑に服せんと請ひ、而して八兵衞は父をして辛苦を嘗めしむるに忍びずとして、己獄に繋がるゝを希へり。乃ち二人の志を嘉し、茂右衞門の罪を免すと共に八兵衞を出獄せしめき。人以て稀有の例とせり。錢屋事件の後喜太郎の女ちかが、父の禁牢に代らんことを出願したる時も、亦代牢を要せずして喜太郎の出獄を許されたり。