石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第一章 制度法規

第三節 司法

刑の裁量は、專ら判例に據るといへども、判例の二樣以上なる場合に在りては、何れに從ふべきかの法規なかりしを以て、享保十五年その輕きを採ることゝなしたりき。然るに之が結果として、爾後刑の裁量漸く寛大に流れしかば、延享三年六月前前田吉徳の一周忌に際して赦を行ひたる後、公事場より罪状を藩侯に上申する時は、寶永以前の判例を擧ぐべく、寶永以前に判例なきときは近例に據るべしとの命を發し、更に天明五年には、刑の裁量は重きに從ふべしとなし、釜煎火炙生釣胴引張切の如き酷刑も亦之を復舊し、鉛責・石籠の拷問を再興し、鼻切耳切の刑を行ひ、首錢を徴して贖罪するの法を實施せしめんとせしが、公事場奉行は首錢のみ時宜によりて出願者に許可することあるべしと布告したるに止り、他の刑罰は一も之を行ふに至らず。次いで寛政三年、刑の裁量は宜しく寛延以前の例に據り、止むを得ざる場合の外は、寶暦以後の例を準用すべからずと定めたりき。