石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第三編

第一章 制度法規

第一節 職制

これ葢し大坂兩度の役に於ける經驗に基づき、初以來の慣習を取捨して規定せし所なるべし。然るに爾後天下泰平にして、之を恪守するもの殆ど無く、士人に對する知行支給の法も、加賀の土地と能登越中の土地とを相混じて與ふることゝなりたるが故に、到底前掲の法に準據する能はざるに至りたりき。是を以て前田綱紀は、元祿中更に綿密なる軍裝軍役の標準を定め、子孫歴世之を規範としたりしが、亦遂に實行せられざりしが如く、安永二年には前田治脩の新たに軍役の法を定めたるを見る。今その一例を擧げんに、自分知二百石の士に在りては、上下七人・人夫三人・夫馬一疋・口取一人を以て從軍するを法とし、若しこの士にして別に役料知百五十石を受くるものならんには、この職俸に對する軍役として、人數六人・人夫二人・夫馬一匹・口取一人を出さゞるべからず。こゝに人夫といひ口取といふは、何れも農民より採るものにして、夫馬も亦農馬とし、皆より徴發して附屬せしめらる。かくて上記の合計上下の人數十三人・人夫五人・夫馬二匹・口取二人となり、且つ自分知二百石のものは、その乘馬をより貸與せらるといへども、この場合に在りては役料知を合はせて三百五十石の資格あるが故に、別に乘馬一匹を自辨せざるべからず。この總勢を内譯すれば、主人一人・鎗持二人[槍二 筋]・口取二人[乘馬 二匹]・具足櫃一人・兜持一人・草履取一人・沓籠一人・挾箱一人・若黨四人・口取二人[夫馬 二匹]の外に、一定の任務を有せざるもの四人となる。後の四人は、若し主人の得道具なるときは、弓一張又は筒一挺を携へしむることを得べく、若し役儀によりて馬驗(ウマジルシ)を要するときは、他の二人を之に當つべしとせり。是によりて小身の士の軍役が如何の程度なりしかと、その從者の任務の種類とを知ることを得べし。若しそれ千石以上の士の軍役に至りては、左表の如く規定せらる。前田治脩が此く軍役の令を新たにせざるべからざりしは、是年十一月幕府の直轄する飛騨高山農民騷擾することありしかば、富山藩をして鎭定の任に當らしめ、加賀藩をして兵を調して應援に備へしめたりし故にして、幾くもなく事止み、未だ進發するに至らざりしといへども、この際甚だしく武備の弛緩せるを暴露したりしなり。而もその法煩瑣にして實行に迂遠なるものたりしこと、之が内容を檢して知り得べし。
人數高の法
 千石二十八人。○千石より七千石迄二百石に五人増。○七千石より一萬石迄五百石に十二人増。○一萬石より五萬石迄五百石に十一人増。

人夫高の法
 千石十人。○千石より七千石迄二百石に三人増。○七千石より一萬石迄五百石に五人増。○一萬石より五萬石迄五百石に四人増。

夫馬高の法
 千石三疋、但夫馬一匹に口取一人宛有之。○千石より五萬石迄千石に三疋増。

乘馬高の法
 千石二疋。○千石以上は馬上の侍の數程持之、猶不足は夫馬の内を乘馬とす。

馬上の士の法
 千石二騎、但自分共。○千石より七千石迄千石に二騎増。但千石より千三百石迄は二騎、千四百石より千六百石迄三騎、千七百石より二千石迄四騎、此割合也。○七千石より一萬石迄千石に二騎増。但七千百石より七千五百石迄一騎増、七千六百石より八千石迄に又一騎増、此割合也。○一萬石より二萬石迄千石に三騎増。但一萬百石より一萬五百石迄に一騎増、一萬六百石より一萬九百石迄に又一騎増之、一萬千石に又一騎増、此割合也。○二萬石より五萬石迄五百石に二騎増。

鎗數の法
 千石五本。但鎗數の内馬上の數程持鎗にて、其餘長柄鎗也。自分の持鎗の數を増事は、此鎗敷の外也。○千石より五萬石迄二百石に一本増。

鐵炮弓の當法
 千石鐵炮三挺。○千石より五萬石迄千石に三挺増。弓有之者は其數程鐵炮を減ずべし。弓は二千百石より一張。○三千五百石より二張。○四千五百石より三張。○七千石より四張。○九千石より五張。○一萬石より六張。○一萬三千石より七張。○一萬四千石より八張。○一萬七千六百石より九張。○一萬九千六百石より十張。○二萬千石より二萬三千五百石迄十一張。○此上二千石に一張増。但弓鐵炮の釣合不宜は、弓を増て鐵炮を減じ、或は鐵炮を増して弓を減ずべし。

旗數之當法
 九百石より一本。○千九百石より二本。○三千七百石より三本。○四千七百石より三本、外小馬驗一本。○五千九百石より四本、外小馬驗一本。○六千九百石より五本、外小馬驗一本。○八千六百石より六本、外小馬驗一本。○九千六百石より七本、外小馬驗一本。○一萬四千六百石より八本、外小馬驗一本。○一萬九千六百石より八本、外馬驗二本。○二萬四千六百石より九本、外馬驗二本。○二萬七千百石より十本、外馬驗二本。○三萬二千百石より十一本、外馬驗二本。○三萬七千百石より十二本、外馬驗二本。○三萬九千六百石より十三本、外馬驗二本。○四萬四千六百石より十五本、外馬驗二本。○四萬八千六百石より五萬石迄十六本、外馬驗二本。

普請人足の當法
 九百石より一人、五萬石迄千石に一人増。

大筒玉目之法、但城責之用器。
 三千九百石より二十目一挺。○五千九百石より三十目一挺。○七千六百石より二十目二挺。○九千六百石より三十目一挺、二十目一挺。○一萬四千六百石より三十目一挺、二十目二挺。○一萬九千六百石より五十目一挺、二十目二挺。○二萬三千六百石より五十目一挺、三十目一挺、二十目一挺。○二萬五千六百石より五十目一挺、三十目二挺。○二萬八千六百石より五十目一挺、三十目一挺、二十目二挺。○三萬千六百石より五十目一挺、三十目二挺、二十目一挺、○三萬五千六百石より五十目二挺、三十目一挺、二十目一挺。○四萬四千六百石より五十目一挺、二十目四挺。○四萬七千六百石より五萬石迄五十目二挺、三十目二挺、二十目二挺。
〔軍役人馬數並役器等之割〕