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石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第九節 版籍奉還

十月十四日廳を舊老臣長成連の長町の邸に移す。長氏秩祿三萬三千石にして、中第二の門閥に居り、その邸宅最も宏壯なりしを以て之を徴發せしなり。十六日先に太政官の發したる布達により、藩士秩祿を廢して給祿を定むることゝし、秩祿三千石及び三千石以上はその十分の一を給祿として與へ、百石及び百石以下は原秩を減ずることなく、而して三千石以下百石以上は順次遞減することゝせり。この時上士上列より下士に至るまでを士族と稱し、足輕以下を卒族とし、同日金澤藩職制を定め、尋いで藩政に關する諸改革の要目及び租税・物産・戸口・公廨の經費等を記して之を政府に致せり。

                            參 事 中 え
 今般大御變革に付、我等自俸舊祿十分一被仰付藩士給祿も右振合に基き、適宜に改革いたし候樣從朝廷仰出候趣、先達而一同え申渡置候通に候。時勢とは乍申、數代勵精之者をして減祿の沙汰におよび候儀者、實以不忍次第に候得共、政令歸一海外萬國与並立、獨立自主之御政體、確乎不拔之大基礎被立、三百年來昇平之舊習を御一洗可遊ため、不已之御次第柄に付、今度別紙割合之通り改而給祿申渡候條、我等之心中能々推察、朝命遵奉之意を體して違背無之樣可相心得。尤右樣申渡候上は、何茂俄に難澁に陷り、勤仕茂可差支痛心之至りに候。依而者今般職務有之者之外、都而勤仕致免除候間、如何樣とも右給祿を以て家内義毓、隨意に勝手取續可罷在候。彌増(イヤマシ)困窮之者は、商法にても望に任せ活計之道相立可申。前文之趣候間、天下國家の爲め人生之義理を辨へ誠實に心懸有之人々は、願出候はゞ學政・軍政も設置候儀に付可承屆候。何茂右等之旨趣體認いたし、厚相心得可申候也。
    己巳十月(明治二年)
〔舊金澤藩事蹟類纂〕
       ○
給祿改革高之覺
 一、自分知三千石以上十分一之高給之。
  右以下百石迄斜線を以相減候割合にて給之。
 一、百石以下無減少從前之通給之。
 一、右都而正米俵數に可引直候。
 一、下士以上都而士族与唱可申候。
 一、足輕以下卒族与唱可申候。
 一、譜代家來之儀は士族・卒え申付候筈に候得共、尚追而可申渡候。
 但、譜代家來之内是迄之通召仕度姓名等相記し可申出事。
 一、右に付知行假所付に村付帳相添、來月十日限り會計寮え可差出候。
 一、右改革給祿高證書印紙等、追而取調次第會計寮より相渡候筈に候。
 右改革に付組・支配等へ可申渡候事。
    己巳十月(明治二年)                         廳
〔舊金澤藩事蹟類纂〕
       ○
金澤藩職制
 知 事  掌内社祠戸口名籍。字養士民。布教化。敦風俗。收租税。督賦役。判賞刑。知僧尼名籍。兼管
 大參事・權大參事  掌内事務
 少參事・權少參事  掌内小事
 大屬・權大島・少屬・權少屬  掌署文案出稽失
 史 生  掌寫公文
  掌  掌候人書疏胥徒
  右參事等職掌。所據官則而定也。蓋少參事參判小事。故分局課職。屬以下員外者皆准此。大屬中或有領之職。而使擬權少參事。毎局首座爲之長。餘判任副焉。下置書記書吏。掌准史生。各局所掌概略如左。
 社祠  大參事治。不別建局。但使掌二員通達其事
  公務掛・公用人  掌傳朝命及府縣交際事件
  監察掛  掌守宮律事布告諸局且糺彈非違擧遺賢理寃枉
  士
族長・士族掛  掌管士族及卒族長
  卒族長  掌管卒族
  議長・集議掛  掌選衆議判條理及策試士族納四民建言
  民政掛・御預所掛附  掌理民治判戸籍租税度支養老濟貧等事
  郡治掛  分管内四。一曰石川河北能美江州高島郡之内今津村等。二日礪波射水。三日新川。四日羽
   咋鹿島鳳至珠洲。毎局各掌其地方民口僧尼名籍等及堤防橋梁營繕事
  市政掛  掌工商僧尼名籍等。及授産業。斷輕罪。管防火部
  會計掛  掌金穀出納秩祿用度等事
  租税掛  掌租税農事墾荒蕪
  北見國内宗谷郡等開拓掛  掌拓宗谷等諸郡
  商法掛  掌商律察商賈得失
  營修掛  掌廳諸局等營繕
  遞掛  掌管内遞事件
  學政掛  掌督學舘文武學科生徒進退演武運艦等事
  文學教師  掌生徒譯洋書及治療算數等事
 武學教師  掌生徒武事等事
  運艦掛  掌測量機關運用等船艦諸件
  厩 掛  掌飼馬習騎等事
  兵制掛  掌兵編隊總治兵器彈藥等事
  兵器掛  掌造器械鑄工鍛冶等事
  彈藥掛  掌鑄彈製藥蓄積運輸等事
  刑法掛  掌判爭訟定刑名且管捕亡卒
  陸 軍  當時所編制五大隊。自大隊長半隊長任焉。其餘士官以士族之。但有才任其職者。
   則雖卒亦補之。
   大隊長・礮隊長  掌備戎具銃礮閲陣列
   補長・翼長・小隊長・半隊長・陣營長・補長・輜重長・補長。
 家 政
  家 令  掌知事家事知事使士族等
  家 扶
  家 從  書吏。
 金澤城護衞  以士族之。
〔明治二年改定職制〕