石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第八節 本多政均の遭難

沖太郎と義平とは衆議の結果に基づき、八月六日朝政均の登城を窺ひたりしも、この日彼は遂に出勤せざりしを以て空しく家に歸りしが、翌七日二人は途上に在りて政均がその邸を出でたるを知り得たり。因りて先行して四時二丸殿中の廊下に至り、左右に別れ刀を側に置きて座し居たりしに、偶附近に人なく、獨政均のみ政事堂に入らんとして來りしかば、沖太郎は進みて一禮し、忽ち脇指を拔きて政均の腹側を突きしに、政均は聲を勵まして何爲るものぞと叫びしも之に答へず、義平も亦一禮して短刀をその腹に刺せり。政均則ち蹌踉として傍に在りし長櫃に倚りしかば、沖太郎はその額を撃ち續いて頸を斫れり。政均の不慮に殪れし時年三十二。本編插入する所の肖像は慶應元年の撮影に係り、その家臣が横濱に至りて技術を學び歸國の後之を試みたるものにして、恐らくは本に於ける最も初期の寫眞なるべし。