石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第五節 征長の役と南越の陣

十四日慶喜大溝に着陣し、十五日今津に移る。而して浪士の陳情書を齎したる加賀藩使者は、大溝に於いて之を慶喜に呈せんとしたるも亦その受くる所とならざりしを以て、この日空しく葉原に歸れり。加賀藩の諸將報を得て、我が周旋の毫も顧みる所とならざりしのみならず、幕吏が疑惑の眼を以て我を見るに至りたるを憤り、濫に浪士輩を庇保するに非ざるを明らかにせんが爲、當に一快戰を試みて武名を擧げんと欲し、乃ち監軍の屬吏歸山仙之助を浪士の陣に遣はして悉くその書類を返附し、諸藩と協議して公然宣戰せんことを内示せり。然るに浪士等は、常時慶喜が會津・小田原諸藩を率ゐてその前路を扼し、福井・彦根によりて背面を脅かされたるのみならず、彼等の本據としたる新保の地が山間の一寒村にして、物資の供給全く缺乏したりしを以て、更に使を加賀藩の營に遣はして救解の爲に盡力せんことを求めたりき。