石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第五節 征長の役と南越の陣

是より先水戸浪士は、十二月二日美濃國揖斐を發し、三日及び四日は山路を彷徨して具に辛酸を嘗めしが、特に蠅帽子峠を通過せし際の如きは、五尺の積雪を踏破して暗夜に八門の炮車を牽引し、五日越前秋生村に野營を張り、六日笹又峠を超え、その夜木本に宿し、遂に今庄を經て新保驛に達したりしに、それより二十町を隔てたる葉原には加賀藩の兵あるを偵知し得たり。浪士は先に笹又峠を通過せしより後、沿道土井・間部・井伊・松平諸氏の士卒に會したりしも、彼等は皆避けて戰はざりしが故に、毫もその進路を妨げらるゝことなかりしが、今や加賀藩の兵儼としてその前程を扼し、而して浪士の疲憊その極に達したりしを以て、止むを得ず從來の好戰的態度を變ぜざるを得ざるに至れり。