石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第五節 征長の役と南越の陣

元治元年春、水戸の天狗黨たる藤田小四郎等は、密かに長藩と謀を通じて兵を常陸の筑波山に擧げ、勤王の大義を鼓吹したりき。是に於いて同志の集る者千餘人に及び、幕府討伐軍を下妻に破り、勢に乘じて水戸城に迫らんとせり。然るに佐幕黨たる市川三左衞門一派の之と戰ふに及び衆寡遂に敵すること能はず、小四郎等那珂湊に退き、偶手兵を率ゐて來り會したる武田耕雲齋と共に尚支持すること二ヶ月なりしも、同志の士或は殺され或は出で降りてその勢益振はず、到底當初の目的を貫徹すること能はざるに至れり。因りて耕雲齋等は京師に赴きてその衷情を訴ふる所あらんと欲し、敗兵を集めて野州に出で、上州に移り高崎の兵を下仁田村に反撃して勝ち、諏訪・松本兩の兵と信州和田峠に戰ひて之を走らせしが、その木曾路に入りてより降雪の爲に惱まされ、行軍頗る慘澹たる状を呈したりき。