石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第四節 元治の變

時に廳に於いても議論大に沸騰せしが、藩吏皆同志の非行を論じ、この機に乘じて悉く彼等を芟除せんことを主張するもの多く、甚だしきは公然慶寧の廢嫡を説く者すらありき。野口斧吉乃ち高木守衞と議し、足輕中村次郎等二人に書を託し、潛かに國境を出でゝ之を不破富太郎に致さしむ。その書に曰く、今日の事思ふに止むを得ざる事情ありしに因るなるべしといへども、保守の吏今や同志を一掃せんと企つるものゝ如し。吾輩の奇禍を得るは固より辭せざる所なるが、勢ひ世子を廢除するに至りては決して忍ぶべからず。兄等今にして策を樹てば尚匡救の途あるべし。否らざれば悔ゆとも及ばざるに至らんと。後次郎等富太郎に會して之を手交す。富太郎答へて曰く、諸君の説く所は傾聽すべし。然れども退軍の事素より深旨あり、今日に至りて如何ともすべからず。當に面晤して鄙意を盡くすべしと。