石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第三節 錢屋五兵衞

五兵衞は富鉅萬を以て算し、大分限を以て稱せらるゝに至れりといへども、尚その抱負を滿足せしむるに足らざりき。五兵衞その晩年に於いて嘆じて曰く、余の一世を通じて苦心畫策せしもの僅かにこゝに止り、未だ以て偉績を天下に遺し盛名を竹帛に垂るゝに足らざるは、一に人生の短きに因らずんばあらず。世上幾多の人、空しく雄志を懷きて墳塋一抔の土に埋るゝもの、皆余と同嘆なるべきのみと。彼の高齡にしてこの言あるもの、亦彼が勇猛果敢の念遂に止むの期なかりしを知るべきなり。