石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第三節 錢屋五兵衞

錢屋五兵衞が近時世人に稱揚せらるゝ所以は、その豪富たりしが爲にあらず、河北潟開拓を試みたるが爲にもあらず、况や又彼が無辜の人にして獄死せるが爲にもあらずして、幕末鎖港の時に當り夙に外國と交通貿易せざるべからざる必要を知り、禁令を破りて之を敢行し、以て開國の先導者たりしとする點にあり。然りといへどもこの事たる、纔かに片々たる諸種の事實を綜合して、恐らくはこれありしならんと想像するに止り、固より牢乎として拔くべからざる證跡の存するにあらず。且つ外國貿易の事が疑獄の原因となりしにもあらずして、裁判の進捗中未だ一たびもこの問題に觸れしを見ざるなり。然らば後世五兵衞外國貿易を爲しゝと推定するに至りたる理由は如何。今左にその資料となりし諸説を列擧すべし。