石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第二節 黒羽織黨及び海防

既にして將軍家茂は、將に朝覲の禮を行はんが爲に入洛したるを以て、齊泰もまた二月十一日を以て京師に向かひ、二十三日建仁寺に入りて宿營せり。然るに二十八日所司代は將軍の命を傳へ、諸藩をして急に國に就かしめき。これ英艦横濱に來り、去年生麥の變に對する償金を幕府に逼りたるを以て、幕府は遂に英國と釁端を開くに至らんことを慮りたるによる。齊泰乃ち晦日を以て入朝し、天顏に咫尺して天盃を賜はり、三月二日を發し、十二日金澤に還れり。齊泰京師に在りしとき、坊間落首を作りて曰く、『どのやうに輕く見えても皆人の下には置かぬ加賀の菅笠』と。當時百萬石の威望尚地に墜ちざるものありしを見るべし。誰か知らん、世人の之を尊重すること今年を以て終末とすることを。