石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第五章 加賀藩治終末期

第一節 奧村榮實の献替

次いで翌十一年三月十六日、また榮實をの勝手方御用兼兩御廣式御用の職に任じ、以て財政の大綱を統べしめき。是より先理財の局に當るものその人を得ず、國用常に給せざりしを以て、齊泰は榮實を召して親しくその整理を囑したりしに、榮實は、固より不才なるのみならず、殊に近年氣力衰耗したるを以て、かくの如き重任はその能く堪ふる所にあらずとして固辭したりき。然るに齊泰、斷乎として之を許さず、彼がの元老に居りて命を奉ぜざるの理由なきを責むるに及び、榮實は恐懼して告げて曰く、侯若し余に託するに財政の樞機に與るを以てせば、余は下を富ますを先にして上を富ますを後にせんと欲す。然らずんば三五年にして倉廩を充實するの効を奏すべからず。苟も侯にして之を聽さば、余敢へて犬馬の勞を致すべしと。齊泰之を可とし、遂にこの任命あるに至りしなり。榮實が齊泰に眷待せらるゝこと頗る大なりしを見るべし。