石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第四章 加賀藩治停頓期

第五節 社會種々相

然るに藩政の末期に及びて富突再び大に行はれ、これを以て公共の費用を補充する方法として利用せしものあり。石川郡鶴來町及び松任町に行はれたるものは皆是にして、天保以降橋梁修築・社寺の再興・天變地異による窮民の救濟等の爲に巨資を要する際、の免許を得て之を行へり。凡そ富突の抽籤器は密閉したる桶を用ひ、小孔を開き、盲人又は幼童をして錐を器中に入れ、番號を記したる木札を刺して引出さしめ、これを揚り札又は突揚札と稱して當籤を定むるを常としたるが、鶴來町に於いて用ひられたる抽籤器は、稍その進歩せるものにして、桐材厚板を以て六角形の箱を造り、中央に軸を通じて回轉攪拌に便ならしめ、側面の一區に孔を開けり。富突の加入金及び分配金等に就きては、松任講方主附のものに就きてこれを見るに、加入は一口八匁五分とし、總數を五千口と定め、その賣渡したる札の裏面には左の規定を印刷せり。

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 ┃鶴 貳 │第 壹 番│錢 壹 貫 目│兩袖五十目ツヽ │印違壹番  │ 百 圓 │   ┃
 ┃千五百枚├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤   ┃
 ┠────┤五番 ノ所│百目ツヽ  │兩袖十五匁ツヽ │印違五番ノ所│貳十目ツヽ│   ┃
 ┃龜 貳 ├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤會の前┃
 ┃千五百枚│十番 ノ所│貳百目ツヽ │兩袖貳十目ツヽ │印違十番ノ所│三十目ツヽ│日迄に┃
 ┠────┼─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤加入
 ┃合   │第貳十五番│ 五 百 目│兩袖三十目ツヽ │印違貳十五番│五十目  │全く入┃
 ┃五千枚 ├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤濟尤紛┃
 ┠────┤第五十 番│錢 貳 貫 目│兩袖百目ツヽ  │印違五十番 │貳百目  │失札落┃
 ┃揚リ札 ├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤札損札┃
 ┃百 枚 │第七十五番│ 五 百 目│兩袖三十目ツヽ │印違七十五番│五十目  │斷不承┃
 ┠────┤     │       │        │      │      │屆候事┃
 ┃兩 袖 ├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤   ┃
 ┃貳百枚 │第九十八番│ 五 十 目│兩袖十匁ツヽ  │印違九十八番│十五匁  │鬮當り┃
 ┠────┼─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤開札┃
 ┃印 違 │第九十九番│  百  目│兩袖十五匁ツヽ │印違九十九番│貳十目  │の後即┃
 ┃百 枚 ├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤刻渡 ┃
 ┠────┤間   々│貳十五匁ツヽ│兩袖八匁五分ツヽ│印違間々  │十匁ツヽ │   ┃
 ┃都 合 ├─────┼───────┼────────┼──────┼──────┤   ┃
 ┃四百枚 │第 百 番│ 十 貫 目│兩袖三百目ツヽ │印違百番  │壹貫目  │   ┃
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〔松任講方富札裏書〕
之によりて當籤となるべき札數と、分配せらるべき子の額とを知り得べし。揚り札の前後の番號を兩袖といひ、袖の前後にも幾何かを與ふる規定なるときは之を孫といひ、孫の前後は之を曾孫(ヒコ)と稱す。印違とは、例へば鶴印の某番が揚り札なるときは、龜印の同番號なるものも亦若干の分配を受くるをいふ。第一番といへるは抽籤第一回に當るものゝ意にして、富突札の番號にあらず。五番の所・十番の所とあるは、第一回抽籤より五回日毎・十回目毎の義にして、又五切・十切とも記さる。但し五切・十切なるも、二十五番・五十番・七十五番は特に多額を分配せらる。九十八回目・九十九回目の抽籤も將に終局に近きを以て分配を受け、第百回目を卷頭と稱し、最多額の分配を受く。その外第二回・第三回・第四回・第六同等の揚り札も亦若干を分配せらる。間々と記すもの即ち是なり。是に因りて計算するときは收入凡べて四十二貫五百目にして、支出二十四貫十九匁とし、講元の利得はその差額十八貫四百八十一匁に當る。但し上記の如き方法は、富突が漸く發達して複雜となりたる後のものにして、その初期に在りては尚頗る粗放なるものありしなるべし。