石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第四章 加賀藩治停頓期

第三節 風教作振

孝子安右衞門は寛政十一年を以て旌せらる。安右衞門は金澤の人にして、幼より父母に孝なりき。父の殘するに及び、安右衞門兄と別居して生を營みしが、風雨寒暑を避けず日々母の安を問ひ、一物を得るあれば輙ち趨りて之を供せり。偶兄の家に在らざるときは、深更に至るまで談笑して母の歡を取るを常とす。安右衞門嘗て疾み、食はざること數日なりしが、母の來り訪ふを見るや、強ひて食を攝りて自ら快癒せるを示したりき。その心を用ふることの厚き概ねこの類なり。因りては錢若干を賜ひ、明年亦若干を賞賜せり。
以上治脩の世に旌表せられたる孝義に就き、加賀・能登二國に屬するものゝみを擧ぐ。