石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第四章 加賀藩治停頓期

第一節 大槻騷動

大槻事件の記述を終るに臨み、また吉徳の卒去に關して聊か研究する所あらざるべからず。これ稗史の類に在りては、吉徳江戸より歸藩するに際し、信濃の千曲川を渡りし時、鳥居又助が水を潛りて侯の馬を刺し、爲に侯は溺れて死するに至りたるなりとし、越路加賀見の如きは又助の事を言はざるも、尚その發病を以て水に溺れたる結果なりとすればなり。

 吉徳江戸御發駕有て、既に越後の國に至り給ふ折節、雨打續川々滿水しけるが、内藏允進め參らせ、御馬にて川々を渡らせ給ひしに、逆まく水に御馬流れて既に危く見え給ひしかば、大勢の御供飛入々々漸々に岸に著せ給ふ。内藏允は馬上にて元の川岸に悠々として居たりけるとかや。是より吉徳卿終に御病惱と成せ給ひ、御歸城の後薨じ給ふ。是内藏允が謀と後にぞ思ひ合せける。
〔越路加賀見〕

前田吉徳幼年筆蹟 侯爵前田利爲氏藏