石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第四章 加賀藩治停頓期

第一節 大槻騷動

稗史小説大槻騷動に於いて、大槻朝元の副主人公たるものは吉徳側室眞如院なり。されば今少しく之に就きて述べざるべからず。眞如院は、江戸芝神明の社人鏑木内膳の女にして名を貞といひ、吉徳卒去の後に至りて眞如院と號す。又内膳の妹に民といふものありて、同じく吉徳側室たりしが、一子重凞を生み、享保十六年を以て逝けり。之を心鏡院と爲す。或は曰く、眞如院は芝濱松町二丁目の八百屋の女子なりしを、内膳が假親となりて藩侯に納れしなりと。眞如院に二男三女あり。長を勢之佐利和といひ、次を八十五郎と稱す。而して女總姫は富山前田利幸の室となり、楊姫は未だ嫁せず、益姫は早世なり。朝元の五箇山に謫せられたる後、寛延元年六月二十一日眞如院、八十五郎を伴ひて江戸を發す。これ八十五郎が執政村井主膳長堅の嗣子たるべきことを命ぜられし爲にして、七月十一日金澤に入れり。