石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第三章 加賀藩治恢弘期

第五節 浦野事件

長連頼に對しては、八月十九日綱紀より命あり。曰く、凡そ領内の臣隸にして騷擾するものあるときは、その主君たるものゝ所領を易へしむるを例とすといへども、長氏は連龍の時以來最も前田氏に忠誠を致しゝものなるが故に、特典を以て之を赦免し、鹿島半郡を領すること一に舊の如くならしむべし。然りといへども嫡子元連の行爲不義なるものありしを以て、剃髮して下屋敷に蟄居せしめ、嫡孫千松を鞠育して他日その家を繼がしむるを要す。且つ領内檢地の事に至りては、之を爲すと爲さゞると一に連頼の欲する所に任ずといへども、若し之を行はんとせば、その方法は全く規定に從ひ、吏員の任免亦の承認を仰がざるべからずと。元連の廢嫡せられたる理由は明らかならずといへども、恐らくは孫右衞門黨の推戴する所となり、彼等の爲に幾分の利益を謀りしが故なるべく、長家譜代噺といへる册子に、徒黨の趣旨は連頼を隱居せしめ、元連の家督を享けたる後、金澤在住の家老加藤釆女等を除かんとするに在りたりといへるもの、恐らくはその眞相を得たるものなるべし。元連は薙髮して一玄といひ、千松は後に尚連といへり。

長元連起請文 男爵長基連氏藏