石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第三章 加賀藩治恢弘期

第一節 三藩鼎立

光高襲封の後五年、寛永二十年十一月十六日長子犬千代を擧げ、三州の士民をして踴躍措く所を知らざらしめき。光高は、この年十月二十二日を以て金澤を發し江戸に赴きしが、途熊谷を過ぎし頃、輿中に坐睡して『開くより梅は千里の香かな』の句を得たり。光高覺めて之を左右に語りしに、衆皆判じて瑞兆なりとなし、偶夫人の産期將に近きに在りしが故に、その兒の必ず男子なるべきを言ひしが、後果して驗ありき。犬千代は長じて綱紀といひしものなり。光高今次の旅行極めて怱忙、前後僅かに七日にして二十八日江戸に達し、尋いで府城に登りて將軍に謁せしに、家光はその女壻の健在なるを見て大に喜べり。