石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第三章 加賀藩治恢弘期

第一節 三藩鼎立

寛永十八年は前年の凶歉に續きて、米穀また甚だ登らざりき。これ六七月の交、東北『黒あひ』の風の吹き荒みたるに因る。是を以て農民の食足らず、貢租に未進多かりしかば、士人は擅に釆地の農民を召喚して糺問し、家財牛馬を沒收し、子女を取りて僕婢に使用するに至りしも、固より之を償ふに足らず。是を以て一部はより士人に補給せりといへども、他は全く之を得ること能はず、專ら節約によりて一時の急を凌がざるべかりき。士人の生活すら此の如くなりしかば、下民に至りては道途に飢死するもの多く、十九年夏には穀五斗の價三十二匁に達すること數日なりき。幸にしてこの年收穫極めて豐饒にして、歳末には五斗の價九匁に下落したるを以て、庶民初めて蘇生の思を爲せりといへり。