石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第二章 加賀藩治創始期

第十節 社會種々相

元和元年伊勢踊大に天下に流行せり。金澤に在りては少年等、中町組・新町組等の團體を組織し、盛裝して躍りながら神明宮より城中に至り、藩侯觀覽に供し、歸路士大夫の邸を巡歴したりき。後士人も亦之に倣ふものあるに至りしかば、能登越中庶民群至して觀覽せり。これ等の中、城内より邌り出だせる一隊は扮裝最も華美を極め、先頭には白の棒と黄金の團扇を持ち、水色帷子を着て覆面し、『治る御代に遊べや遊べ、風がなければ波もなし、天下泰平國土安穩、御馬をやらうか御輿をやろか、御局もいやよ御輿もいやよ、我が思ふ人にひかれて、天下泰平國土安穩。』と拍子を揃へて謠ひながら神明宮に向かふものあり。次に米搗躍ありて、金の搗臼を車にて運ばせ、杵を擔ひたる女子三十人をして之に隨はしむ。女子は皆紫のにて髷を包み、伊達帷子を着して覆面し、赤地緞子を幅五分宛に裁ちたるを前垂とし、杵の頭に穴を穿ち、之を振るときは銀箔の細片を散亂せしむる仕掛とし、『めでた〱の若松や枝も榮ゆる葉も繁る』と謠ひ、次には小幡宮内の唐人踊あり、村井飛騨の鐘引躍あり。而して人持組の士皆之に隨ひ、經費は悉くより支出せられき。夏に切り十月に至って止む。三壺聞書に之を元和七年に係くるものは誤なるべし。