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石川県史 第二編

第二章 加賀藩治創始期

第七節 大阪兩陣

この役に於ける利常行動を詳述せるものに大阪冬御陣日記一卷あり。但しこの書は後日の編纂に係るものにして誤謬間々これあるを見る。觀る者宜しく之を識別せざるべからず。

 慶長十九年甲寅冬十月松平筑前守少將菅原朝臣利光公(利常初名)は、在江戸にて被御座候が、北國歸城の時、天下不快の事有と聞えければ、十月十日申刻に、越中國堺より一日一夜に加州金澤へ御着被成。中略。
 十月十四日、金澤を御出陣成候。門出軍神の血祭とて御馬取御成敗、其晩小松へ御著被成候。雨降り、川(手取川)以の外水出しかば、夫馬數多流死也。
 同十五日、雨降り、小松を御出被成、大聖寺へ御著被成。
 同十六日、大聖寺を御出被成と、上方へ御所(家康)樣御急被成御上り候により、大津にて御出向候へて御目見被成候半とて、筑前守(利常)御急被成候。其晩越前内アソウヅ(麻生津)へ御著被成、山城父子三人(横山長知)ながら被召出候。
 同十七日、アソウヅを御出被成、イマジヨ(今庄)を同晝時分御通り被成候。夜通(ヨドホシ)に海津へ御通り被成、則十八日の朝、海津へ御者被成候。
 同十八日、雨降、海津より御に御乘被成。
 同十九日、雨降、朝大津へ御著被成、御所樣御待被成候。
 同二十日、雨降、大津に御逗留被成候。
 同廿一日、大津御逗留被成候。
 同廿二日、御所樣膳所(永原ノ誤)が崎へ御著被成候故、御目見にぜゞ(同上)へ御出被成候。
 同廿三日、御所樣ぜゞ(同上)を御出陣成、二條へ御著被成候。筑前樣大津に御逗留被成候間、御跡より大人數御待被成候。
 同廿四日、大津を御立被成、惣人數大形參著、を御通被成候て、嵯峨の本觀へ御著被成候。洛中之者人數見物申、見事成故諸人萬民耳目を驚し申候。
 同廿五日、嵯峨に御逗留被成候。
 同廿六日、嵯峨に御逗留被成候。御所樣御目見に二條へ御座被成候。御所樣能をさせ御覽被成候。
 同廿七日、嵯峨に御逗留被成候。衆御目見其數を不知。
 同廿八日、嵯峨に御逗留。諸方より見廻其數を不知。
 同廿九日、嵯峨を御立被成、山城の内天神の森の内薪(酬恩庵)の寺迄御著被成候。御通被成候へども、見事成故諸人萬民見物をいたし、數馬八幡山右(人數馬數カ)に見て御供申也。
 十一月朔日、天氣吉。薪の寺に御逗留被成候。
 同二日、雨降、天神の森より御出被成、河内の國飯盛のわき砂村へ御著被成候。其晩雨降、小屋の者迷惑申候。
 同三日、天氣吉、晝より風。飯盛に御逗留被成候。砂村にて濫妨をいたす。
 同四日、同所御逗留。
 同五日、飯盛を御出被成、河内國高安へ御著被成候。
 同六日、高安の内、小山と申所へ御着被成候。屋敷御法度にて、御馬廻御扶持被召放候。
 同七日、攝津國の内、田邊と申所に御着被成候。其日一段塞く、午刻時分雨風吹申候に、丸山と申所にて、諸人馬を據(揃カ)、武者立御覽被成候半とて、左右のならぶ馬よりおり候へば、諸人寒く御座候故迷惑不是非候。
 同八日、田邊に御逗留被成候。諸人刈田いたし候。
 同九日、同所に御逗留被成、刈田いたし候。
 同十日、田邊を御出被成、住吉のわき矢野とやらん申所へ御著。
 同十一日、同所に御逗留被成候。
 同十二日、同所に御逗留被成候。
 同十三日、矢野を御出被成候て、阿部野と申所へ御著被成候。
 同十四日、同所御逗留被成候。
 同十五日、同所御逗留被成候。御見廻の衆多し。
 同十六日、同所に御逗留被成候。
 同十七日、同所に御逗留被成候。
 同十八日(此ノ條十七日ノ誤)、御所樣へ御目見、住吉へ御越被成候。
 同十九日、同所に御逗留被成候。
 同二十日、同所に御逗留被成候。戌刻に俄に風吹、鐵炮なりしかば諸人驚き申候也。筑前樣も先手へ御見廻として、其夜御座被成候。諸勢道より御返し被成候。
 同廿一日、同所に御逗留被成、御見廻被成候。
 同廿二日、同所に御逗留。曉富田次左衞門火事出申故、行方不走り申候なり。
 同廿三日、天氣吉。同所に御逗留被成候。御見廻衆餘多御座候。先手へ御見廻被成候。
 同廿四日、天氣吉。同所御逗留。御見廻衆餘多御座候。
 同廿五日、天氣吉。同所御逗留被成、先手へ御見廻被成候。
 同廿六日、同所に御逗留被成候。
 同廿七日、同所御逗留被成、先手へ御見廻。
 同廿九日、同所御逗留被成、先手へ御見廻被成候。見廻衆多御座候。
 同三十日、同所御逗留。先手へ御見廻被成候。
 十二月朔日、同所御逗留。先手へ御見廻被成候。
 同二日、同所御逗留。先手へ御見廻被成候。
 同三日、同所御逗留被成候。
 同四日、同所に御逗留被成候。大坂表篠藪を御先衆山崎閑齋乘取申候(長徳)。岡田助右衞門・大橋外記・大河原助右衞門・同四郎兵衞討死いたし候。以上。手負は稻垣掃部・加藤石見・才伊豆・奧村備後・小幡播磨・生駒監物・上田六左衞門・アイ(阿井)八兵衞・山田大炊也。其日大小姓先手へ參るとて御穿鑿被成候。則筑前樣は木の(野)村に御著被成、先手は篠山に陣取申候。御馬廻・小姓衆先手へ御法度の由に候所、御馬廻りにてアイ八兵衞、大小姓にて山田大炊御穿鑿極り申候て切腹仕候。
 同五日、同所御逗留被成候。
 同六日、右同斷。
 同七日、右同斷。
 同八日、右同斷。
 同九日、同所御逗留被成候。其晩時(鬨)の聲揚可申のよし、御前(御所樣カ)樣被仰出候。鐵炮連發にて揚申候。
 同十日、同所御逗留。時のこゑ又揚申候。
 同十一日、其晩筑前守樣被仰出候は、するべ(つるべ)鐵炮仕候へのよしにて、家中鐵炮大小によらず持筒までもち、篠山へ參申候。
 同十二日、同所御逗留。
 同十三日、同斷。雨ふる。
 同十四日、御城之内塙團右衞門[此ノ條十六日夜ノコトニ係ル)・米田監物・御宿越前・上篠又八・二宮與三右衞門・下澤彦太夫首をとる。七條彌三右衞門、此首は二宮與三右衞門とる也。同所に御逗留。其晩蜂須賀阿波守所へ夜討入申候。仙波(船場)へ入申候。安房守(阿波)内中村右近討死仕候。又稻田修理鑓合申候。其子稻田九兵衞十六歳にて鑓合申候とて、御前(御所樣カ)樣より感状出申候。其外山田織部・岩田七左衞門・森甚五兵衞・森甚太夫父子鑓合申候。御城之内吉田七左衞門、修理と鑓合申候、あいのき(相退)。
 同十五日、同所御逗留被成候。人數馬數家中付候へよし、池田外記・森甚太夫・西尾隼人に被仰出、御付被成候。
 同十六日、同所御逗留被成候。
 同十七日、同所御逗留。小々姓又馬に乘御目に懸申候。
 同十八日、右同斷。
 同十九日、中小姓衆馬乘、御前にて懸御目申候。其晩極若狹の後室、右は御扱として御城へ御入被成候に、出不申候。其晩御出被成候。御扱に御出被成候。
 同廿日、同所御逗留。大坂御城御扱御相談大形相極申筈。
 同廿一日、同所御逗留。大坂御城御扱にて相濟申候。
 同廿二日、同所御逗留。御城ワリ申候。
 同廿三日、同所御逗留。
 同廿四日、同斷。
 同廿五日、町所御逗留被成。
 同廿六日、同斷。
 同廿七日、同所に御逗留被成候。藤堂和泉(高虎)内衆成敗成候。
 同廿八日、同斷。
 同廿九日、同所御逗留。其夜將軍樣御本陣に、戌刻計に火事出候へて諸人驚申候。
 慶長二十年正月朔日、同所に御逗留被成候。其朝井伊掃部、嘉例の由にて鐵炮打候へば、諸人驚申候。御氣遣之故(處カ)、城中よりも鐵炮打申候。掃部迷惑仕候。
 同二日、同所御逗留被成候。將軍樣へ御禮に筑前樣被御座候。
 同三日、同所御逗留。御所樣二條を御立被成、名古屋迄御越被成候。
 同四日、同所御逗留。將軍樣へ御目見に御越被成候。
 同五日、同所に御逗留被成候。
 同六日、同所。大坂普請御覽被成に筑前樣御越被成候。夫より直に將軍樣へも御越被成候。其夜少し雨降る。
 同八日、同所御逗留被成候。先手御普請場御覽被成に御越候。
 同十日、同所御逗留。大坂普請御見廻。御年寄衆御振廻被成候。
 同十一日、同所御逗留。家中年寄衆御振廻。御見廻に御普請場へ御越被成候。
 同十二日、雨降申候。少。同所御逗留。先手へ御見廻、將軍樣へ御目見也。大坂之掃除。
 同十三日、雪少降、巳刻に晴。同所御逗留。大坂普請場へ御見廻被成候。
 同十四日、同所御逗留。御普請奉行衆御振廻被成候。將軍樣より鯉筑前樣へ被遣候。亥刻に參候。
 同十五日、風吹。同所御逗留。マキヱ屋與兵衞御振廻申上候。
 同十六日、風吹。同所御逗留。辰刻に地震ゆり申候。右兵衞樣・常陸樣大坂表を御立被成候。松田左衞門死す。
 同十七日、風少吹。同所御逗留。生駒主水御扶持被召放候。
 同十八日、同所御逗留。將軍樣へ御暇乞に御越被成候。
 同十九日、同所御逗留。將軍樣伏見迄御越被成候。
 同二十日、同所御逗留。御普請場へ御見廻被成候。御普請奉行御見廻被成候。
 同廿一日、同所御逗留。何も知行之書付之御判被下候、御普請御見舞、小幡宮内[五百 石]・前田七兵衞樣[五百 石]被遣候。
 同廿二日、同所御逗留。
 同廿三日、大坂普請終申候。
 同廿四日、コノ(木野)村を御立被成候て、本能寺へ御越被成候。
 同廿五日、に御逗留。
 同廿六日、將軍樣御參内。
 同廿七日、ノヽ宮・シユン子イ・三井寺・藤永、少進(下間)にて能も御座候。に御逗留被成候。
 同廿八日、將軍樣ゼヾまで御出被成候。
 同廿九日、筑前樣少進へ御振廻能御座候。シユン子イ・ウトウ・道成寺・清經。
 同三十日、三河(松本忠直)殿御出被成候。御逗留。晝織部(古田)殿へ數寄に御座被成候。其晩本能寺にて地震ゆり申候。
 二月朔日を御出被成、和爾(邇)へ御著被成候。
 同二日、わに御出被成、今津へ御著被成候。
 同三日、今津を御出、疋田へ御著被成候。
 同四日、疋田を御出、今庄へ御著被成。今庄にて三河殿御振廻。
 同五日、今庄より大聖寺まで御出被成候。
 同六日、天氣吉。大聖寺より金澤へ御歸城被成候。
〔前田家大阪冬陣日記〕