石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第二章 加賀藩治創始期

第六節 基督教の傳播

茶人としての南坊は、千利休の高足にして、七哲の一として指を屈せられき。利長嘗て南坊を招き茗宴を催す。喫茶既に終り、利長立炭を爲しゝに、南坊感賞して曰く、侯の工夫極めて珍重、こはこれ源三位頼政の歌意を汲むものにあらずやと。利長聞きて大に悦べり。異日利長の臣生田四郎兵衞といふもの、南坊が言ひし所の意を問ふ。利長曰く、この言汝輩の能く解し得ざる所なるべし。頼政は後白河天皇に仕へて和歌に巧なりし人なり。天皇嘗て頼政に十文字の題を與へて一首を咏ぜしむ。頼政乃ち『曙の峰にたな引横雲の立つは炭やく煙なりけり』と吟じ、因りて叡感を辱くするを得たりしと傳ふ。余光に試むる所の立炭甚だ妙ならずして、茗家の嫌惡する十字状を爲しゝを以て、香を焚きて之を避けたり。南坊の余を賞せし所のもの即ち是なりと。利長南坊二人の交情その基づく所あるを見るべし。