石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第二章 加賀藩治創始期

第二節 越中平定

是に於いて利家はまた復讐戰を試み、四月八日山崎庄兵衞長徳[初名 長鏡]を先鋒たらしめて鳥越城を圍めり。城將久世但馬守壁を固守して出で戰はず。利家乃ち諸將の議を容れて、四近の邑里を攻略せしめ、以て城兵を誘致せんとせしに、城中より斥候を放ちて利家の動靜を偵察せしめき。利家の臣小林權太夫・上坂又兵衞等之を見、銃卒を麾きて射撃せしめ、逃ぐるを追ひて城麓に迫りしに、但馬守は兵五百を出して急に突撃せり。長徳之に應じて敵の裨將倉地猪之助を殪し、横山大膳長知も亦力を合はせて數十人を戮す。是より先、利家の近臣九里甚左衞門正貞は、譴を得て家に在りしが、密かに軍に從ひて功を成さんと欲し、越中の將杉江彦四郎が鳥越の急を聞きて來り援けんとするを見、相搏ちて之を刺しゝに、敵兵大に恐れ皆城中に入りて馨息を潛めたりき。利家も亦深く爭はず、旌旗を戢めてその夜金澤に振旅し、次いで諸士の功を論じて長徳を第一に擧げ、黄金三十兩・小袖二襲を賜ひ、正貞にも鞍馬を贈りて之を賞せり。