石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第二章 加賀藩治創始期

第一節 末森の戰

既にして村家津幡に至りて軍を調ふ。世子利長松任城に在りしが、又來りてこゝに會せり。津幡の城將前田秀繼・寺西秀則等利家に説きて曰く、機既に遲れたり。公の末森に到るは、恐らくはその陷落の後にあらん。如かず姑くこゝに留りて更に戰報を待たんにはと。利家色を作して曰く、我弱年より成政と武を爭ひて曾て讓らず。如何ぞ奧村・千秋・土肥輩の死を默過すべけんやと。秀繼・秀則又卜者を招き進軍吉凶を筮せしめんと請ふ。利家一室に入り、村井長頼を延きて軍議を定め、出でゝ卜者を見て聲を勵まし、『とかく又左衞門後卷するぞ。見よ。』といへり。卜者將に懷にする所の卜筮の書を出さんとせしが、利家の意既に決するを知り、直に『時分も、星も、能御座候。はや〱と御出馬。』と應へしかば、利家は笑ひて彼が卜筮の絶妙なるを賞し、馬に跨りて征途に上れり。利家の臣出陣に後れたるもの陸續として至り、之を檢すれば二千五百餘人を算したりき。