石川県立図書館/大型絵図・石川県史

石川県史 第二編

第二章 加賀藩治創始期

第一節 末森の戰

この役、前田利家は素より秀吉の與黨たりしが故に、老臣長連龍をして兵一千人を率ゐて之を援けしめき。而して秀吉に對して無二の同盟たりし利家の、自ら馬を東海に進めずして金澤城に晏如たりしは、越中佐々成政を監視するの任務を帶びたるによる。蓋し成政の父祖は尾州春日井郡比良の城主たり。されば身を微賤に起したる秀吉の如きは、彼が眼中のものにあらず。必ずや機を得て之を一蹴し、以てその自尊心を滿足せしめんと欲したるなるべく、彼が賤嶽の戰後暫く秀吉に屈服したりしは、實に一時の方便に過ぎざりしなり。然るに今や信雄・家康の二人が秀吉と相反目するを見、彼は好機逸す可からずとなし、直に南下して加賀を侵し、一な平素犬猿啻ならざる利家を屠り、一は遙かに秀吉の勢力を牽制し、その功によりて織田氏より、北陸の覇者たる己の地位を認められんことを期せり。