多摩デジタル新選組資料館/新選組関連資料

小島資料館 所蔵資料

近藤勇書簡 佐藤彦五郎他宛 慶応元年十一月四日


乍馬乗啓上致候弥御安全
奉賀候然者今般下拙事
大小監察付添ニ而藝州
廣嶋迄出張夫ゟ長州
萩城迄下拙主従罷越候之
御用被仰付誠ニ不容易
次第尤土方沖田始メ皆々
一同者京師江罷在候間御安心
可被下候今日出立之同志ニハ武田観柳
伊東甲子太郎
山崎丞吉村貫一郎芦谷登荒井唯雄
尾形俊太郎服部武雄
右等召連候得共彼地江
入干戈白刃交候節孤勇
不可當実以万死不出之節
ニ到申候且長人与者下拙事ハ
十分ニ仇結ひ居候間此辺者
心痛仕候得共併天下高名
世戴ニ誠心ヲ以議論ニ及ひ
素々油火者相成候心得ニ而
邪正共引まとめ至當
議論青天白日ニ論夫ニ而
も彼ゟ破れを引出候節
彼ニ曲曲益積重可致哉
必内別れ邪正離隔
ニ可相成候奉存候尤活斗之
策可有之哉御安事
無之様右等ハ他言御断
申上候先者出立懸ヶ乱
筆御仁免可被下候不宣
       近藤勇
十一月四日
 
  佐 兄
  児 兄
  粕 兄
 尚々皆々様江宜御鶴声
 奉希候親共留守宅是亦
 不替御厚配願入候留守局
 之處ハ土方江相託シ置万一
 事も有之節小子之宿願
 歳三子江得与申置候間後世
 害無様尚赤心御心添被下度
 委細御承知被下度尚剣流名
 沖田江相譲り申度此段宜
 御心添被下度此辺も当時
 御他言御断申上候
 
【現代語訳】

取り急ぎ申し上げます。いよいよ
ご安全のこととお祝い申し上げます。このたび、私は
大小監察の付き添いにて、芸州(安芸国)の
広島迄出張し、それより長州(長門国)の
萩城迄主従にて出張する
御用を仰せつかりました。誠にたやすいこと
では有りません。土方、沖田始め皆
一同は京師におりますのでご安心
下さい。今日出立の同志には武田観柳斎、
伊東甲子太郎、
山崎丞、吉村貫一郎、芦谷登、荒井唯雄、
尾形俊太郎、服部武雄、
右等を召し連れてまいりますが、しかし、彼地では
干戈白刃を交えて戦さになれば、私一人の勇気
では対応できず、実際に命を落とすことに
なるでしょう。また、長州人と私は、
池田屋事件にて十分に仇を結んでいるため、此辺は
心痛です。しかし、天下に高き名世
を戴き、誠の心を以って議論に及べば、
もともと、新選組と長州は油と火の関係に成るので、
邪も正も引まとめ、
議論を包みかくさずに行い、それにより、
長州より破れを引出した場合、
長州がますます不利になり、
必ず内部分裂になり、邪正は離隔に
成るでしょう。尤も長州を生かす
策もあると思いますので御心配
なさらぬように願います。右の事は他言をお断
わり申し上げます。先は、出立に懸けて乱
筆をお許し下さい。不宣
              近藤 勇
 十一月四日
  佐 兄 (佐藤彦五郎)
  児 兄 (児島鹿之助)
  粕 兄 (粕谷 良循)
 
 尚々皆々様へ宜しく
 お伝え下さい。親共留守宅も是また
 替らず御厚配をお願いします。留守局
 の所は土方へ相託しました。万一
 の事がありましたらと思い、私の願いは、
 土方歳三氏へ念を入れて申しておきました。後世に
 害の無いように、尚、赤心の御心添えをお願いします。
 委細をご承知下さいますよう。尚剣流名は、
 沖田へ相譲りたいと思います。此段宜しく
 お心添えをお願いします。このことも、
 ご他言をお断わり申し上げます。