日本ラグビーフットボール協会/日本ラグビー デジタルミュージアム

年代史・観戦記・その他資料

日本代表テストマッチ史

テストマッチ観戦記とテーブル

English 写真 機関誌
平成25年(2013)6月8日 G:花園 R:ローレンス・ファンデルメルヴァ(SA)
日本代表 18-22 ウエールズ代表
 
No.527★289 リポビタンDチャレンジ2013 ウエールズ代表第3回来日 第1戦 
2013年6月8日 G:花園 R:ローレンス・ファンデルメルヴァ(SA)
日本代表18-22ウェールズ代表
1三上 正貴(東芝)1161ライアン・ベヴィントン
2堀江 翔太(パナソニック)7162エミール・フィリップス
3山下 裕史(神鋼)3スコット・アンドリュース
4大野  均(東芝)1T0C4ブラッドリー・デーヴィス
5伊藤 鐘史(神鋼)0G05ロウ・リード
6ヘンドリック・ツイ(サントリー)2PG26アンドリュー・クームズ
7マイケル・ブロードハースト(リコー)0DG07ジェームズ・キング
C8菊谷  崇(トヨタ)8ロブ・マカスカー
9田中 史朗(パナソニック)1T19ロイド・ウィリアムズ
10立川 理道(クボタ)1G110ダン・ビガー
11福岡 堅樹(筑波大学)0PG311ダフィッド・ホーウェルズ
12クレイグ・ウィング(神鋼)0DG012ジョナサン・スプラット
13マレ・サウ(ヤマハ)13オーウェン・ウィリアムズ
14藤田 慶和(早大)111214ハリー・ロビンソン
15五郎丸 歩(ヤマハ)15リーアム・ウィリアムズ
交代【日】長江有祐(リコー)①、畠山健介(サントリー)③、日和佐篤(サントリー)⑨、田村優(NEC)⑫、木津武士(神鋼)②、小野澤宏時(サントリー)⑪、安井龍太(神鋼)⑥、北川俊澄(トヨタ)④ 【ウ】リース・ギル①、アンドリース・プレトリアス⑥、ダン・ベイカー⑧、タヴィス・ノイル⑨、リース・パッチェル⑩  シンビン=マカスカー(ウ)
得点:Tブロードハースト、藤田、G五郎丸、PG五郎丸2

 
 6月8日、近鉄花園ラグビー場は満員の観客で埋まった。その声援に後押しされるかのように、日本代表はSH田中史朗らを軸に果敢に攻撃をしかけ、ウエールズ代表を追い詰める。同時期に行われていたブリティッシュ&アイリッシュライオンズオーストラリア遠征で主力が抜け、若手主体のウエールズとはいえ、地力がついたことは明らかだった。
先にゲームの流れをつかんだのは日本代表だった。前半15分、20分とFB五郎丸歩がPGを決める。22分、28分にSOダン・ビガーにPGを決められ同点に追いつかれても、前にでる意志は保ち続け、勢いは衰えなかった。同点で迎えた前半37分、ウエールズ陣深くでのラインアウトでサインプレーが見事に決まる。FLマイケル・ブロードハーストがライン際の僅かなスペースを切り裂き、11-6とふたたびリードを奪って前半を終えた。攻守で前へ出る戦い方をリードしたのはHBだ。スーパーラグビーのハイランダーズで活躍し、このシリーズからチームに合流したSH田中史朗と、インサイドCTBから上がったSO立川理道。立川は「自分でもフラットにボールをもらって仕掛けようと思ったし、キレのある両CTB、速いWTBをどんどん使おうと思っていた」と語り、田中のことを「判断力、FWの動かし方がさすが。久しぶりのSOで、フミさんと組めてよかった」と振り返った。
 PNCでのトンガ戦、フィジー戦では立ち上がりにペースを失った。見違えるような戦いを実践できたのは、目の前の闘争に集中したからだろう。選手たちは繰り返してきたアタックシェイプの形成と組織的防御を意識し、先ずファイトした。田中がラックに頭を突っ込む。レベルズで揉まれているHO堀江翔太が、赤い壁にも怯むことなくボールを前に運ぶ。周囲も続いた。エディー・ジョーンズHCが「選手たちの努力を誇らしく思う。誰もが、歴史を変えようとプレーしていた」と前半を振り返った。
 しかし、それでも後半に逆転されたのは、チームが正しい方向に歩いてはいても、まだまだ道の途中にいる何よりの証拠だろう。ジョーンズHCはその現状を、「テストラグビーとは、いかにチャンスをつかむかが大事。タフなプレーを続けることが、一貫性を持つことにつながる」と表現した。
 後半に入って、より一層オーソドックスな戦い方を貫いたウエールズに対し、日本代表は2分、11分に得たPGのチャンスをFB五郎丸が逃す。相手は6分、19分にSOビガーがきっちりとPGを蹴り込んで逆転すると(11-12)、23分には日本が手放したボール(WTB福岡堅樹のショートパント)を攻め、僅かなチャンスをWTBハリー・ロビンソンのトライに結びつけた。日本代表は29分にスクラムから攻撃を継続させて、WTB藤田慶和のトライを呼んだものの、38分にもPGを許して結局届かず。福岡は「判断能力が足りなかった」と唇を噛んだ。
 史上初めてのウエールズ戦勝利に近づけた80分。NO8菊谷崇主将は、「悔しい。得点につながるチャンスを自分たちで活かせなかった」としながらも、「このまま1週間過ごしても仕方ない。切り替えて、来週は成長した姿を見せられると思う。花園で、これだけの人たちの前でプレーできたのは誇り」と語った。壁を破ることはできなかったけれど、手応えを感じたからこその言葉だ。誰よりも闘争心を見せた田中は、「負けは負け」と勝負師らしい視点で試合を振り返り、「前半にいい形を作れたが、そこで取り切れなかった。もう一歩(相手より)動けていれば取れたはず」。もっと集中し、もっと走る。日本代表が勝ち切るには、その道しかないことを強調した。
 ウエールズ代表のロビン・マクブライドヘッドコーチは日本代表を評して、「思った以上の力があった。来週も心して戦う」と言った。1週間後のレッド・ドラゴンは、花園での何倍もの集中力で向かってくるのは間違いない。しかし、その舞台で歴史を変える勝利を手にしてこそ、進化する日本代表の姿は世界に発信される。そして、その後の加速が約束されるだろう。