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決勝観戦記とテーブル

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新国立競技場
天理大 55-28 早稲田大●
 
令和2年(2020)度 第57回大学選手権決勝
2021年 1月11日 G:国立競技場 R: 塩崎 公寿 KO 13:15
天理大5528早稲田
1谷口 祐一郎(④東海大仰星)2971久保  優(④筑紫)
2佐藤 康(③天理)26212宮武 海人(③早大学院)
3小鍛治 悠太(④大産大附)3小林 賢太(③東福岡)
4アシペリ・モアラ(③日航石川)4T14大嵜 哲徳(③久我山)
5中鹿 駿(④光泉)3G15下川 甲嗣(④修猷館)
6服部 航大(③天理)1PG06相良 昌彦(②早実)
C7松岡 大和(④兵庫・甲南)0DG07村田 陣悟(①京都成章)
8山村 勝悟(②天理)C8丸尾 崇真(④早実)
9藤原 忍(④日航石川)4T39小西 泰聖(②桐蔭学園)
10松永 拓朗(④大産大附)3G310吉村  紘(②東福岡)
11マナセ・ハビリ(①高知中央)0PG011古賀 由教(④東福岡)
12市川 敬太(④日新)0DG012平井 亮佑(④修猷館)
13シオサイア・フィフィタ(④日航石川)13長田 智希(③東海大仰星)
14土橋 源之助(④光泉)6814槇  瑛人(②久我山)
15江本 洸志(③日航石川)1FK115河瀬 諒介(③東海大仰星)
交代 【天】高橋虎太郎(③報徳学園)①、谷口永遠(②関大北陽)②、西山隆希(④興國)③、ジョネ・ケレビ(③ナタンブア高(Fiji))④、ナイバルワガセタ(②秋田工)⑦、豊田祐樹(①天理)⑪、臼井礼次郎(④天理)⑨、藤田大輝(③伏見工)⑮【早】伊藤大スケ(示に右)(①桐蔭学園)⑫、桑田陽介(③明和)④、川村謙尚(③常翔学園)、横山太一(③久我山)①、阿部対我(③早実)③、川嵜太雅(①東福岡)、南徹哉(④修猷館)⑭、田中智幸(③早大学院)⑦

 
 これまで2度、大学選手権決勝で惜敗してきた天理大学が念願の初優勝を遂げた。準決勝では明治をパワーで押し切り、決勝戦では早稲田を総合力で圧倒した。まさに大学No1と言える、見事な内容であった。高校時代にはそれほど有名でなかった選手たちに、強靭なトンガ人留学生(いずれも高校時代に来日)を加え、厳しい練習を背景に生み出されたFWの驚くべきスピードの集散と、それを起点とした素早いBK展開は見事というほかはない内容であった。これまで早稲田を強力FWで圧倒して勝ったチームはいたが、FWで圧倒しながら決して行き過ぎず、SH藤原の素早くも長いフラットなロングパスで仕留めるスタイルは本当に新鮮であり素晴らしかった。確かに4番モアラ、13番フィフィタが攻撃の核になっていたことは間違いないが、彼らも個人で単独の突破を図るのではなく、天理大学の見事な組織戦略を十分に理解し、組織の一員として周囲の選手を見事に生かしていた。ブレイクダウンにおけるモアラの奮闘、BK展開の際のフィフィタの冷静な状況判断と、安定したプレーは早稲田にとって大きな重圧となったはずだ。勿論、常に相手より早く集散に駆け付ける谷口、佐藤、小鍛冶、中鹿、服部、松岡、山村のスタミナにも驚かされた。
 開始3分、中盤での早稲田ボールのラックを天理FWが押し切り、モアラがこぼれ球を拾って豪快に前進。ゴール前ラックからFWが何度か突進した後、右サイドに浅く立つ12番市川が手をあげて呼び、そこへSH藤原が素早くフラットなパスを送りトライ(7-0)。普段は試合の序盤で相手を動揺させる早稲田が、逆に驚かされる形のスタートとなった。10分、同様の形で早稲田をゴール前に押し込んだラックから、今度は早稲田のサイドの防御が甘いとよんだモアラが強引にトライした(14-0)。その後、早明戦からチームを立て直し、BKの展開力を誇る早稲田も、敵陣に入るとチームが機能し、高速BKの展開にFWの集散を絡めて攻撃を継続し、20分、PR小林のトライに結び付けた(14-7)。ここで早稲田に流れが来て互角の展開になるかと思われたが、天理SO松永は冷静に判断し、早稲田陣で得たペナルティを、この時だけタッチキックではなく、確実にPGを決めて流れを渡さない(17-7)。その後もFWの優位をベースに天理が攻め、31分には最初のトライと同じ形で今度は左サイドに市川がトライ(22-7)。このまま前半終了と思われた41分、天理FWがゴール前で好球を供給、SH藤原の素早いパスからフィフィタが突進し、縦に走りこんだ市川が3トライ目をあげた(29-7)。松永のサポートもあり、枚数で優る天理のBKには常に余裕があった。ボールがあまり回らなかった土橋、ハビリも、要所で存在感をアピールした。
 これで試合は概ね決まりかけたが、後半、早稲田が最初にトライを獲れるかどうかが試合を終わらせない条件のように思われた。ところが天理FWに容赦はなかった。後半6分、早稲田ゴール前の早稲田ボールの5mスクラムで、天理FWが強烈なプッシュをかけた。圧倒される早稲田のスクラムからインゴールにこぼれたボールをSH藤原が抑えて試合を決めた(36-7)。この日のスクラム回数はたったの7回。谷口、佐藤、小鍛冶のフロントローは、それまでフィールドプレーでの活躍が目立っていたが、ここ一番で、明治のスクラムをも押した、天理の強力スクラムを全開させた。彼らはきっとバック5のおかげと語り、8人の結束(塊)を強調することだろう。
 連覇を目指してきた早稲田も決してあきらめることなく攻め、FB河瀬、交代で入ったSH河村、CTB伊藤がトライを返して意地を見せた。しかし天理大学は、その間にも12番市川、4番モアラ、15番江本がトライを返して、早稲田の連続トライ、追い上げを許さなかった。
 天理大学がセーフティーリードのまま試合は終盤となったが、早稲田は決して闘志を失うことなく、交代で入ったメンバーも含め、最後までタックルし、ボールを追い続けて、ディフェンディングチャンピョンとしてのプライドを見せた。ノーサイド後の丸尾主将の態度も毅然とし潔かった。
 優勝した天理大学は、誰もが強靭な身体をして、FWは接点への集散で相手を圧倒するスピード、スタミナを保持していた。そしてBKはフラットなパスとスピード感あふれるランニングを体得して大量得点に繋げた。試合後の優勝インタビュー、天理大学小松監督の冷静なコメントと、それとは全く対照的な激情家、松岡主将の熱い言動と涙を見た時、多くのラグビーファンは心から拍手を送ったことだろう。