多古(たこ)町/多古町デジタルアーカイブ

多古町史

地域史編

旧多古町

水戸・石成(みと・いしなり)

村の文書

 紛争にまつわる文書
 村が発展していく過程には、ときには他村との争いがあり、また村内の秩序を守るための規制や努力など、さまざまなものがあったが、記録に残る幾つかのうちに、まず隣村島村との境界争いがある。
 字沖の不耕作地内にあった村境いの問題で、この事件に関する両者の主張や奉行所の判決などの詳細は、島の項に載せたので省略するが、事件についての村人の決意を示す一文に、次のようなものがある。
 
   連印一札之事
一、去ル寅年、多古村嶋村水論一件ニ付、御見分御役人様方、川付地面御改之処、名所沖ニ而壱町三畝六歩村内永荒之場処ニ於て、嶋村より自己村境申上候段甚不届至候間、掛合論所ニ相成候。今般村内一統相談上、出入議定仕候処相違無之候
一、相手方ニ親類縁者有之候共、一件相済候迠ハ交(決)而往復致申間敷候
一、出入諸雑用之儀者、割付日限之通急度定席江持参可仕候。若遅滞ニ及候ハヽ、親類組合ニ而立替候共差支無之様可仕候
一、出入惣代之者相頼候上ハ、此一件ニ付不依何事、惣代心任ニ可仕候
一、物毎検約を用ひ、大願成就神仏ニ相祈可申候。右之条々相背候ハヽ、後日如何様之御咎申付候共、少茂御恨申間敷候
   文政二年卯(一八一九)二月
 
 事件解決までは、親戚との往き来も絶ち、費用も連帯責任での支払いを確約し、代表者の権限を尊重することなど、緊張感のみなぎる文面である。
 もう一件は、村の内政問題についての文書で、村方三役の内の一人について、役所への出入りを差し止めて欲しいということを、村民一同が願い出たものである。それには、次のように書かれている。
 
   乍恐以書付奉願上候
御知行所下総国香取郡水戸村小前一同、百姓代与兵衛、同与左衛門奉申上候。先達中田畑質地之儀、相手久右衛門後家とよ煩ニ付、代組頭  右衛門と及異論ニ、無是非御地頭所様江御訴奉申上候処、双方被召出御調之上蒙御利解、格別之御以慈悲ヲ一件示談被仰付、此段難有致御請、速ニ示談ヲとけ、帰村之上銘々質地之年数取調見候処、先盤申上通リ前代より困窮之百性数多有之候ニ付、右示談之趣ニ而者、小前五分通り人数者請返之地所一切無之候ニ付、此侭打過罷在候而者、身之上取付之期茂無御座甚々難渋之次第、今一応御地頭所様江御願申上示談仕直度と一同騒立申候得共、乍併一旦蒙仰示談仕候儀ヲ、又候再願爲致候而者、村役人並先盤出府惣代之者、奉対御地頭所様江何共以恐入儀ニ付、村役人並百性代より篤と利解申諭、尤右示談之趣意ヲ以請地無之者ニ者多分之儀者不行届候へ共、少々宛者無録困窮之小前丹情(ママ)ヲ以金子有合候節者爲取付之、夫々地所譲可呉之由ヲ、名主縫之丞より、小前一同申聞早速取鎮いたし、右ニ付最早質地之儀者村方穏便ニ治り一切否無御座候へ共、組頭  右衛門儀者、是迠之始末栖村役人ニ不似合不実之致方三ケ年来引続難渋仕候。且又私シ共村方者郷例仕来之儀者田畑質地ニ而已不成、其外ニも郷例仕来儀数々有之候へ共、同人勤役致居候而者以来又候何様之事仕出ス程茂難計、小前猶難渋之基ニ付、何卒以御慈悲右 之段御堅察之上、組頭  右衛門儀者当分村役所出席之儀者御差留被成下置度候様、乍恐偏ニ奉願上候 以上
   文久二戌年(一八六二)六月                     御知行所下総国水戸村
                                       百姓 傳兵衛 印
                                         (以下十九名氏名省略)
                                     百姓代 与左衛門 印
                                       同  与兵衛 印
                                   差添人組頭 仁左衛門 印
    御地頭所様
      御役人中様
 
一、当二月中 村方田地一件之儀者、組頭  右衛門、久右衛門後家とよ方江越押致候儀者、全ク者相給出石人と同意いたし、是迠仕来之田地受引差留候事
一、舟越村役人衆   右衛門之御頼ニ而 右衛門之御取持いたし候事
一、舟越村名主五郎兵衛・同庄左衛門、水戸村名主見習粂蔵を押込ニ致、御収納差支ニ相成候様相談致候事
一、舟越村役人衆   右衛門を名主役に取持いたし、御年貢未進致同意ニ而番々勝手之融通いたし、右等相談取極候事
一、水戸村小前一統  右衛門者舟越村役人同意之心底心得候、改名主縫之丞退後おしみ候事
一、縫之丞忰粂蔵、小前一同ニ而名主見習相願候儀を、組頭  右衛門差添願候へ共、内心不承知之事
一、組頭  右衛門と百姓代与左衛門・同与兵衛、名主跡役之儀ニ付不和ニ相成候事
一、田地一件之儀ニ付、名主見斗ひを取憒(みだ)し小前一統之質流地ニいたし難渋相掛、自分意恨をはらし謀斗之事
一、小前一統是迠引続難儀致候ニ而   右衛門組頭役不帰依之事
一、御地頭所様江右之次第調印願書ニ而願出候事
一、相給役人出石人共 田地流地ニ相成候上者、  右衛門方江荷担致ざる様ニ相成候不実之事
一、  右衛門方より相給役人を頼み、名主見習粂蔵押込之相談相掛候へ共、相給役人同意せざる事
一、粂蔵と  右衛門喧〓爲致、相給役人内済ニ立入取斗ひ之事
一、名主見習粂蔵外より種々難題申掛候へ共、一切取合ざる事
一、一作年より  右衛門、名主方江式日之御礼ニ不出候事
一、当夏中石成村田地ニ付、粂蔵と石成村役人と不和ニ相成候様  右衛門取斗之事
 
 前の文は村民一同の願書で、次が組頭の役所出入り差し止めを願う理由を箇条書にしたものである。
 地方(じかた)役人と農民との間に起こる紛争は、他の村々にも多く見られることであり、また、このようなことがらを経て村の進展がなされて来たわけでもある。