さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

 
道のべの        スリッパの       膝の上に        洋傘へ         
もの音を        もう何も        一歩だに        空き壜の        
死の日まで       真っすぐに       食べよとも       思はざる        
今のまに        眠られぬ        
 
 
 

10811
道のべの 紫苑の花も 過ぎむとし たれの決めたる 高さに揃ふ
ミチノベノ シオンノハナモ スギムトシ タレノキメタル タカサニソロフ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.41


10812
スリッパの 爪先を揃へ 置きて出づ 夜に帰り来む みづからのため
スリッパノ ツマサキヲソロヘ オキテイヅ ヨニカエリコム ミヅカラノタメ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10813
膝の上に 編みものを置きて 聞く電話 雪の降る夜と 告げつつ遠し
ヒザノウエニ アミモノヲオキテ キクデンワ ユキノフルヨト ツゲツツトオシ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10814
洋傘へ あつまる夜の 雨の音 さびしき音を 家まではこぶ
カウモリヘ アツマルヨルノ アメノオト サビシキオトヲ イエマデハコブ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10815
もの音を 立つることなき わが生活 隣の庭は 木を整ふる
モノオトヲ タツルコトナキ ワガクラシ トナリノニワハ キヲトトノフル

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10816
もう何も 見えぬ位置まで へだたりて 敵意のごとし 残る思ひは
モウナニモ ミエヌイチマデ ヘダタリテ テキイノゴトシ ノコルオモヒハ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10817
一歩だに 引けぬと思ひ ゐたりしが 醒めてふたたび 耳の鳴り出づ
イッポダニ ヒケヌトオモヒ ヰタリシガ サメテフタタビ ミミノナリイヅ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10818
空き壜の 残りはさかさに 交叉させ 運び去りたり 音もろともに
アキビンノ ノコリハサカサニ コウササセ ハコビサリタリ オトモロトモニ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10819
死の日まで せぐくまりものを 書くならむ 落ちてみひらく 椿の花は
シノヒマデ セグクマリモノヲ カクナラム オチテミヒラク ツバキノハナハ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10820
真っすぐに 立つといふこの さびしさよ 花の終れる 向日葵の茎
マッスグニ タツトイフコノ サビシサヨ ハナノオワレル ヒマワリノクキ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10821
食べよとも 寝よともたれも 言はざれば 目をしばたたく 夜の明け近く
タベヨトモ ネヨトモタレモ イハザレバ メヲシバタタク ヨノアケチカク

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10822
思はざる 高みへ視線の ゆく目にて みづきの花の 真盛りに遇ふ
オモハザル タカミヘシセンノ ユクヒニテ ミヅキノハナノ マッサカリニアフ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10823
今のまに 反故の類ひも 焼きおかむ 身を絞り人を 恋ひし日ありき
イマノマニ ホゴノタグヒモ ヤキオカム ミヲシボリヒトヲ コヒシヒアリキ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40


10824
眠られぬ 夜を明かすとも 女にて 眉をゑがくと いふやさしさよ
ネムラレヌ ヨヲアカストモ オンナニテ マユヲヱガクト イフヤサシサヨ

『風』(風短歌会 1979.1) 通巻80号 p.40