さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌研究

 
襟あしの        うづくまる       地に低く        蝉殻に         
気づかれぬ       硝子戸に        家にゐて        口径の         
遠き雲の        ひび入りの       犬と歩み        噴水に         
よりどなく       剥製の         忘れたる        
 
 
 

10756
襟あしの 荒れたる感じ 身に残る 楡の梢の 風凪ぐときに
エリアシノ アレタルカンジ ミニノコル ニレノコズエノ カゼナグトキニ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.134


10757
うづくまる いづこもわれの 流刑地 草抜けば草の 臭ひがのぼる
ウヅクマル イヅコモワレノ リュウケイチ クサヌケバクサノ ニオヒガノボル

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.134


10758
地に低く 視線向く日と さびしみて 枇杷の花散る ところを過ぎぬ
チニヒクク シセンムクヒト サビシミテ ビワノハナチル トコロヲスギヌ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.134


10759
蝉殻に 残る筈なき 生きものの ほてりを呼びて てのひらに乗す
セミガラニ ノコルハズナキ イキモノノ ホテリヲヨビテ テノヒラニノス

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.134


10760
気づかれぬ やうに通りぬ さわだちて 人々の寄る 橋のかたはら
キヅカレヌ ヤウニトオリヌ サワダチテ ヒトビトノヨル ハシノカタハラ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.134


10761
硝子戸に まばらにあたる 雨の音 死にたる魚は 鱗しづけし
ガラスドニ マバラニアタル アメノオト シニタルウオハ ウロコシヅケシ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.134


10762
家にゐて 職場に在りて わが思ひ 不意に短く 喘ぐことあり
イエニヰテ ショクバニアリテ ワガオモヒ フイニミジカク アエグコトアリ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10763
口径の かすかに一つ 一つ違ふ カットグラスを 並べゆくとき
コウケイノ カスカニヒトツ ヒトツチガフ カットグラスヲ ナラベユクトキ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10764
遠き雲の 地図を探さむ この町を のがれむといふ 妹のため
トオキクモノ チズヲサガサム コノマチヲ ノガレムトイフ イモウトノタメ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10765
ひび入りの 卵割りたる 音の下 思はぬ明るさに 黄味の飛び出づ
ヒビイリノ タマゴワリタル オトノモト オモハヌアカルサニ キミノトビイヅ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10766
犬と歩み くまぐまを知れる 川はらに 今朝はまだらに 雪の積もれる
イヌトアユミ クマグマヲシレル カワハラニ ケサハマダラニ ユキノツモレル

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10767
噴水に 遠くはなれし 池のはた 動かぬ水は 雲を映せり
フンスイニ トオクハナレシ イケノハタ ウゴカヌミズハ クモヲウツセリ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10768
よりどなく 風に揉まれゐし 糸杉の 大き影なす 陽の入りぎはに
ヨリドナク カゼニモマレヰシ イトスギノ オオキカゲナス ヒノイリギハニ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10769
剥製の やうに目ばかり 光らせて 夜をゐるわれは 何のけものか
ハクセイノ ヤウニメバカリ ヒカラセテ ヨヲヰルワレハ ナンノケモノカ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135


10770
忘れたる ころに一つづつ 咲く薔薇を 思ひやさしく なりて眠りつ
ワスレタル コロニヒトツヅツ サクバラヲ オモヒヤサシク ナリテネムリツ

『短歌研究』(短歌研究社 1972.3) 第19巻3号 p.135