さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌

 
贈らるる        月光の         メトロノームに     前の世に        
遠き日の        亡き母が        遺されし        みづからの       
十年を         叩きても        額縁の         等身の         
 
 
 

10744
贈らるる 指環のサイズ 告げやれど 草抜きて日々に 荒れゆくわが手
オクラルル ユビワノサイズ ツゲヤレド クサヌキテヒビニ アレユクワガテ

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.142


10745
月光の かけらの如き 硝子屑 落ち葉焚く火に 掃き寄せてゆく
ゲッコウノ カケラノゴトキ ガラスクズ オチバタクヒニ ハキヨセテユク

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.142


10746
メトロノームに せかされてゐし 時の間に 花氷の船は 溶けて跡なし
メトロノームニ セカサレテヰシ トキノマニ ハナゴオリノフネハ トケテアトナシ

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.142


10747
前の世に 別れしままの 夫のごと 雨の夜更けの まなうらに来る
マエノヨニ ワカレシママノ ツマノゴト アメノヨフケノ マナウラニクル

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.142


10748
遠き日の 訣別に似て きれぎれに 科白を洩らし ゐる映画館
トオキヒノ ケツベツニニテ キレギレニ カハクヲモラシ ヰルエイガカン

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.142


10749
亡き母が くちずさみゐし 数え唄 古毛糸つなぐ をりふしに恋ふ
ナキハハガ クチズサミヰシ カゾエウタ フルケイトツナグ ヲリフシニコフ

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143


10750
遺されし 象牙の印も いつしかに 用失ひて 過ぎし年月
ノコサレシ ゾウゲノインモ イツシカニ ヨウウシナヒテ スギシトシツキ

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143


10751
みづからの 重みに形 撓みたる ゼリーも一夜 ありて凍らむ
ミヅカラノ オモミニカタチ タワミタル ゼリーモイチヤ アリテコオラム

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143


10752
十年を 経てわが家に 残りゐる 男物の傘 いつまた開く
ジュウネンヲ ヘテワガイエニ ノコリヰル オトコモノノカサ イツマタヒラク

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143


10753
叩きても 鳴らぬ鍵盤の 夢などに 焦れつつ耳を 病む幾夜あり
タタキテモ ナラヌケンバンノ ユメナドニ ジレツツミミヲ ヤムイクヨアリ

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143


10754
額縁の 中の坂道 をりをりに わが呼びよせし 人を歩ます
ガクブチノ ナカノサカミチ ヲリヲリニ ワガヨビヨセシ ヒトヲアユマス

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143


10755
等身の 古鏡置く われの部屋 次第に亡き母に 似つつ太らむ
トウシンノ フルカガミオク ワレノヘヤ シダイニナキハハニ ニツツフトラム

『短歌』(角川書店 1962.11) 第9巻11号 p.143