さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌研究

 
夜行バスの       失ひし         遺されし        月の夜の        
向き替えて       推し量り        遠き空に        出口の一つ       
はぐれゆく       わかちもつ       指組める        夕占を         
電光に         空席の         塑像にて        
 
 
 

10669
夜行バスの 窓より見えて 星かげと 山あひの灯と またたきかはす
ヤコウバスノ マドヨリミエテ ホシカゲト マヤアヒノヒト マタタキカハス

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10670
失ひし 版圖を憶ふ ごとくゐて 草なびくとき 尾根光る見ゆ
ウシナヒシ ハンズヲオボフ ゴトクヰテ クサナビクトキ オネヒカルミユ

『短歌研究』(短歌研究社 1985.1) 第15巻1号 p.132


10671
遺されし 埴輪まもりて 一日ゐき 砂に足あと 沈めつつゆく
ノコサレシ ハニワマモリテ ヒトヒヰキ スナニアシアト シズメツツユク

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10672
月の夜の 鴟尾は照りつつ たかむらの けぶかき圍繞 よりのがれ得ず
ツキノヨノ シビハテリツツ タカムラノ ケブカキインジュウ ヨリノガレエズ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10673
向き替えて 來し埴輪ゆゑ 月のかげ うつろなる目に さすときあらむ
ムキカエテ コシハニワユヱ ツキノカゲ ウツロナルメニ サストキアラム

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10674
推し量り 思ふ自在を 寂しめり 生きておはせし 日より續きて
オシハカリ オモフジザイヲ サビシメリ イキテオハセシ ヒヨリツヅキテ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10675
遠き空に 花火あがれる 夜なりしが つらぬきがたき ことも知りゆく
トオキソラニ ハナビアガレル ヨナリシガ ツラヌキガタキ コトモシリユク

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10676
出口の一つ ふさぎて本を 積める部屋 究極の砦の ごとき思ひす
デグチノヒトツ フサギテホンヲ ツメルヘヤ ツヒノトリデノ ゴトキオモヒス

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.132


10677
はぐれゆく 心をつなぎ とむるごと 受話器の奥に 鳴るオルゴール
ハグレユク ココロヲツナギ トムルゴト ジュワキノオクニ ナルオルゴール

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133


10678
わかちもつ 密計もなくて 歩みつつ 一人は石を 湖の面に抛ぐ
ワカチモツ ミッケイモナクテ アユミツツ ヒトリハイシヲ ウミノモニナグ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133


10679
指組める 塑像の胸の 隈ふかし 執して思ふ ことにもあらず
ユビクメル ソゾウノムネノ クマフカシ シュウシテオモフ コトニモアラズ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133


10680
夕占を こころむるがに 仰ぐ空 母さへわれの 絆となるな
ユウウラヲ ココロムルガニ アオグソラ ハハサヘワレノ キズナトナルナ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133


10681
電光に をりふし深く 射られつつ ぞめく森あり 夜のまなかひに
デンコウニ ヲリフシフカク イラレツツ ゾメクモリアリ ヨノマナカヒニ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133


10682
空席の 一つをめぐる 確執に 遠くしてわが 書庫のあけくれ
クウセキノ ヒトツヲメグル カクシツニ トオクシテワガ ショコノアケクレ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133


10683
塑像にて しづかに双手 あげゐたり 雨に八つ手の 花のけぶらふ
ソゾウニテ シヅカニモロテ アゲヰタリ アメニヤツデノ ハナノケブラフ

『短歌研究』(短歌研究社 1958.1) 第15巻1号 p.133