さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

短歌研究

 
ふたいろの       せかさるるは      くらがりに       みづからは       
懀まれて        窓ガラスの       楤も未だ        われを呑まむ      
少しづつ        凍るとも        尾けられて       そむかれし       
いつ死ぬか       ガラス透かして     夢の中         ぬきんでて       
白い花は        「叩いても       事務室と        終バスの        
 
 
 

10642
ふたいろの ルージユ日により 使ひ分け 殘る若さを をしみつつ生く
フタイロノ ルージユヒニヨリ ツカヒワケ ノコルワカサヲ ヲシミツツイク

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.37


10643
せかさるるは われにあらずや 時間來て 活けのボートを 呼び戻す聲
セカサルルハ ワレニアラズヤ ジカンキテ イケノボートヲ ヨビモドスコエ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.37


10644
くらがりに 何踏みて來し わが靴ぞ 脱ぎ捨ててふり むけば光りぬ
クラガリニ ナニフミテキシ ワガクツゾ ヌギステテフリ ムケバヒカリヌ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.37


10645
みづからは つひに光らぬ 天體に たぐへて身を歎く ことも久しも
ミヅカラハ ツヒニヒカラヌ テンタイニ タグヘテミヲナゲク コトモヒサシモ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.37


10646
懀まれて ゐると知り得て 安らぐや ヴアイオリンの胴を 磨きてゐたり
ニクマレテ ヰルトシリエテ ヤスラグヤ ヴアイオリンノドウヲ ミガキテヰタリ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10647
窓ガラスの くもり拭きつつ ひとりなり 夜汽車に碓氷 越え行かむとす
マドガラスノ クモリフキツツ ヒトリナリ ヨギシャニウスヒ コエユカムトス

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10648
楤も未だ 芽吹かぬ道を 幾曲り われをいづこに連れ 去るやバスは
タラモイマダ メブカヌミチヲ イクマガリ ワレヲイヅコニツレ サルヤバスハ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10649
われを呑まむ 渦かと怖れ 見し波紋 一瞬にして あとかたもなし
ワレヲノマム ウズカトオソレ ミシハモン イッシャンニシテ アトカタモナシ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10650
少しづつ ずらし來て今の 平衡ぞ 湖の水の 落ちてゆく音
スコシヅツ ズラシキテイマノ ヘイコウゾ ミズウミノミズノ オチテユクオト

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10651
凍るとも 解くるともなし 澤ふかく 殘れる雲の 幾かたまりは
コオルトモ トクルトモナク サワフカク ノコレルクモノ イクカタマリハ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10652
尾けられて ゐるごとくまた ふり返り 自轉車の灯に 照らし出されつ
ツケラレテ ヰルゴトクマタ フリカエリ ジテンシャノヒニ テラシダサレツ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10653
そむかれし われよりも苦しみ 深からむ 夫とひそかに 思ひ暮しつ
ソムカレシ ワレヨリモクルシミ フカカラム ツマトヒソカニ オモヒクラシツ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.38


10654
いつ死ぬか 知れねば日記も 書けずと言ふ 君の枕べに 花活けて去る
イツシヌカ シレネバニッキモ カケズトイフ キミノマクラベニ ハナイケテサル

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10655
ガラス透かして のみ空を見る 日々過ぎて 海へ行かむと いふ便り讀む
ガラススカシテ ノミソラヲミル ヒビスギテ ウミヘユカムト イフタヨリヨム

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10656
夢の中 といへども髪を ふりみだし 人を追ひぬき ながく忘れず
ユメノナカ トイヘドモカミヲ フリミダシ ヒトヲオヒヌキ ナガクワスレズ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10657
ぬきんでて 如何に照るやと 戀ほしけれ かの塔を月下に 見たることなし
ヌキンデテ イカニテルヤト コホシケレ カノトウヲゲッカニ ミタルコトナシ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10658
白い花は みんな匂ふさと 背後の聲 手打らむとして 立ち竦みたり
シロイハナハ ミンナニオフサト ハイゴノコエ タヲラムトシテ タチスクミタリ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10659
「叩いても 鳴らぬキイもつ 人」 と書き 日記閉づれば やや安らぎぬ
タタイテモ ナラヌキイモツ ヒトトカキ ニッキトヅレバ ヤヤヤスラギヌ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10660
事務室と 部屋とをゆきき するのみの 日々に戀ふ海に 續ける牧場
ジムシツト ヘヤトヲユキキ スルノミノ ヒビニコフウミニ ツヅケルマキバ

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39


10661
終バスの 通りて久し どの店も 仕舞ひて星夜の 道となりゐむ
シュウバスノ トオリテヒサシ ドノミセモ シマイテホシヨノ ミチトナリヰム

『短歌研究』(日本短歌社 1956.7) 第13巻7号 p.39