さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
母の病状を       道端に         かがまりて       被害妄想と       
抗はず         踏切りの        わが爲に        
 
 
 

10491
母の病状を 告ぐる聲なり 落着きて 聞かむと受話器 持直したり
ハハノビョウジョウヲ ツグルコエナリ オチツキテ キカムトジュワキ モチナオシタリ

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7


10492
道端に くぐもりて亞炭 碎きをり 日暮れて何を 賣らむ老婆ぞ
ミチバタニ クグモリテアタン クダキヲリ ヒグレテナニヲ ウラムロウバゾ

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7


10493
かがまりて 靴の埃を 拭きはじむ 少女は待ち疲れし 表情をして
カガマリテ クツノホコリヲ フキハジム ショウジョハマチツカレシ ヒョウジョウヲシテ

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7


10494
被害妄想と 片附けられて 立ちて來つ 夫にも我は 理解されざる
ヒガイモウソウト カタズケラレテ タチテキツ ツマニモワレハ リカイサレザル

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7


10495
抗はず 無氣力になりて ゆく我を 進歩とみなす 一人か君も
アラソハズ ムキリョクニナリテ ユクワレヲ シンポトミナス ヒトリカキミモ

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7


10496
踏切りの つかぬままに漸く 保ちゐる 平安か毛糸 編みつつ寂し
フミキリノ ツカヌママニヨウヤク タモチヰル ヘイアンカケイト アミツツサビシ

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7


10497
わが爲に 強ひて歸らむと する事も なき夫か灯を 消して眠らむ
ワガタメニ シイテカエラムト スルコトモ ナキツマカヒヲ ケシテネムラム

『朱扇』(朱扇社 1953.4) 第5巻3号 p.7