さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
明日は明日の      手術後の        自我強く        子らの爲        
病室の         冬となる        集め毛糸の       働きつつ        
急に廣場に       
 
 
 

10465
明日は明日の 風が吹くといふ 言葉あり 涙たりつつ 今宵思へり
アスハアシタノ カゼガフクトイフ コトバアリ ナミダタリツツ コヨイオモヘリ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10466
手術後の 眠りにおちし 母の顏 生えぎはにうすく 汗はにじめり
シュジュツゴノ ネムリニオチシ ハハノカオ ハエギハニウスク アセハニジメリ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10467
自我強く 生き來し母よ 枕邊に 入れ齒を置きて 眠り給へり
ジガツヨク イキコシハハヨ マクラベニ イレバヲオキテ ネムリタマヘリ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10468
子らの爲 殘し來し財の 盡きなむを 氣にかけています 事もしりたり
コラノタメ ノコシコシザイノ ツキナムヲ キニカケテイマス コトモシリタリ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10469
病室の 窓に今朝啼く 百舌の聲を 聞かすすべもなし 耳病む母よ
ビョウシツノ マドニケサナク モズノコエヲ キカススベモナシ ミミヤムハハヨ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10470
冬となる 日々長く病院に 通ふべき 母の爲今宵も 脚絆編みつぐ
フユトナル ヒビナガクビョウインニ カヨフベキ ハハノタメコヨイモ キャハンアミツグ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10471
集め毛糸の 脚絆なれども はきて見つつ 母の目に光る 涙をみたり
アツメケイトノ キャハンナレドモ ハキテミツツ ハハノメニヒカル ナミダヲミタリ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10472
働きつつ 貧しき日々よ 棄てばちの 生き方のふと 美しく見ゆ
ハタラキツツ マズシキヒビヨ ステバチノ イキカタノフト ウツクシクミユ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4


10473
急に廣場に 出づるが如き ことなきや 暗く貧しき 日々が續くも
キュウニヒロバニ イヅルガゴトキ コトナキヤ クラクマズシキ ヒビガツヅクモ

『朱扇』(朱扇社 1952.12) 第4巻11号 p.4