さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
再びは         返信を         人妻と         不意に顯ちし      
つきつめて       義務的に        別るるなら       女歌手の        
無表情な        徒勞に終らむ      
 
 
 

10405
再びは 逢はじと決めし 人ゆゑに 發車までの長き 時をよりそふ
フタタビハ アハジトキメシ ヒトユヱニ ハッシャマデノナガキ トキヲヨリソフ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.3


10406
返信を 書かざることを せめてもの 良心として 日日を呆けをり
ヘンシンヲ カカザルコトヲ セメテモノ リョウシントシテ ヒビヲホウケヲリ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.3


10407
人妻と 知りてよりは 來ぬかの人の 潔癖さにさへ 我は惹かるる
ヒトヅマト シリテヨリハ コヌカノヒトノ ケッペキサニサヘ ワレハヒカルル

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.3


10408
不意に顯ちし 幻影に惑ふ 街角よ 雨は限りなく 鋪道を濡らす
フイニタチシ ゲンエイニマドフ マチカドヨ アメハカギリナク ホドウヲヌラス

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.3


10409
つきつめて 人を思へば 現し世に 幻覺といふが あるも知りたり
ツキツメテ ヒトヲオモヘバ ウツシヨニ ゲンカクトイフガ アルモシリタリ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.3


10410
義務的に 生きゐると思ふ 日がありて 洗濯物等 ためて懶けをり
ギムテキニ イキヰルトオモフ ヒガアリテ センタクモノトウ タメテナマケヲリ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.3


10411
別るるなら 子のなき中にと 言ひし友の 言葉幾夜も 思ひ續くる
ワカルルナラ コノナキウチニト イヒシトモノ コトバイクヨモ オモヒツヅクル

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.4


10412
女歌手の 手をのべて歌ふ ブルースに 何のはずみか 涙こぼれつ
オンナカシュノ テヲノベテウタフ ブルースニ ナンノハズミカ ナミダコボレツ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.4


10413
無表情な 月のまろさよ 樂堂を ぬけ出でてひとり 歩む夜空に
ムヒヨウジョウナ ツキノマロサヨ ガクドウヲ ヌケイデテヒトリ アユムヨゾラニ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.4


10414
徒勞に終らむ 忍耐にも今は 從はむ かかる生き方を 常疎みつつ
トロウニオワラム ニンタイニモイマハ シタガハム カカルイキカタヲ ツネウトミツツ

『朱扇』(朱扇社 1952.7) 第4巻7号 p.4