さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
保身の為の       煉炭を         傾く政治を       無表情に        
真実は         人は皆         告白されし       読みたき本       
降りやみて       悲劇のヒロインに    現実の         
 
 
 

10377
保身の為の ポーズも互に 見せ合ひて ここの職場に 安き日はなし
ホシンノタメノ ポーズモカタミニ ミセアヒテ ココノショクバニ ヤスキヒハナシ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10378
煉炭を かこみて語る 昼休み 誰もよごれし 指先寄せて
レンタンヲ カコミテカタル ヒルヤスミ ダレモヨゴレシ ユビサキヨセテ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10379
傾く政治を 歎く事務所の ひる休み 一人は立ちて 謄写を初む
カタムクセイジヲ ナゲクジムショノ ヒルヤスミ ヒトリハタチテ トウシャヲハジム

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10380
無表情に 声のみ立てて 笑ふ時 胸しめつける 寂しさは湧く
ムヒョウジョウニ コエノミタテテ ワラフトキ ムネシメツケル サビシサハワク

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10381
真実は 必ずとほると 主張する 妹の若さを 時に危ぶむ
シンジツハ カナラズトホルト シュチョウスル イモウトノワカサヲ トキニアヤブム

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10382
人は皆 寂しきものと 知らむとす 狭量に怒りやす かりし妹も
ヒトハミナ サビシキモノト シラムトス キョウリョウニイカリヤス カリシイモウトモ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10383
告白されし 愛に悩む事も 未だなき 汝か言葉短く 語りたるのみ
コクハクサレシ アイニナヤムコトモ イマダナキ ナンジカコトバミジカク カタリタルノミ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10384
読みたき本 重ねし儘に 日々は過ぐ 菜の花瓣も 散りそめにつつ
ヨミタキホン カサネシママニ ヒビハスグ ナノカベンモ チリソメニツツ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10385
降りやみて 高き梢より しづれ初む 暫らくの間を 一人ありたき
フリヤミテ タカキコズエヨリ シヅレハジム シバラクノマヲ ヒトリアリタキ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.2


10386
悲劇のヒロインに 己を疑して 来し事も 寂しく一人 夜を更かし居り
ヒゲキノヒロインニ オノレヲギシテ キシコトモ サビシクヒトリ ヨヲフカシオリ

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.3


10387
現実の いとなみはなべて 虚しきか 松のしづれの 夜半まで続く
ゲンジツノ イトナミハナベテ ムナシキカ マツノシヅレノ ヨワマデツヅク

『朱扇』(朱扇社 1952.5) 第4巻5号 p.3