さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
思ひ過ごしは      なにげなく       語尾濁して       獨身を         
遺産爭ひを       壓世的に        逆らふことも      それてゆく       
 
 
 

10369
思ひ過ごしは 止めよと言ひし 君が言葉 次第に我の 鎭りてゆく
オモヒスゴシハ ヤメヨトイヒシ キミガコトバ シダイニワレノ シズマリテユク

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10370
なにげなく 驛の前より 別れ來て 暗き過去もつ 友と思へり
ナニゲナク エキノマエヨリ ワカレキテ クラキカコモツ トモトオモヘリ

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10371
語尾濁して 別れ來し身を 顧みる 無思想と思はれむ 事の寂しく
ゴビニゴシテ ワカレキシミヲ カエリミル ムシソウトオモハレム コトノサビシク

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10372
獨身を 通すと言ひ張り 死期迫る 父を歎かせし ことも忘らえぬ
ドクシンヲ トオストイヒハリ シキセマル チチヲナゲカセシ コトモワスラエヌ

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10373
遺産爭ひを 避けて故郷も 捨てしとふ 父亡き後に 知りし眞實よ
イサンアラソイヲ サケテコキョウモ ステシトフ チチナキアトニ シリシシンジツヨ

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10374
壓世的に なりゐる我と 知りながら 苦しまぬ君か 今宵もおそし
エンセイテキニ ナリヰルワレト シリナガラ クルシマヌキミカ コヨイモオソシ

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10375
逆らふことも なくて平穏に たつ日日に 諦め易くなる 寂しむ
サカラフコトモ ナクテヘイオンニ タツヒビニ アキラメヤスク ナル サビシム

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2


10376
それてゆく 人のこころに 焦だちて みにくかりしと 今は思ふも
ソレテユク ヒトノココロニ イラダチテ ミニクカリシト イマハオモフモ

『朱扇』(朱扇社 1952.4) 第4巻4号 p.2