さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
偶然に         ひつそりと       愛されて        今一たび        
時へなば        姿勢崩さず       振返らず        なりゆきに       
下草の         燃え盡きし       生くる事が       眉あげて        
隣の主婦に       
 
 
 

10356
偶然に めぐり逢ひたる バスのなか 心ゆらぎの すべなかりけり
グウゼンニ メグリアヒタル バスノナカ ココロユラギノ スベナカリケリ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10357
ひつそりと 殘雪ふみて もだしゆく 傷つきやすき 君と知るゆゑ
ヒツソリト ザンセツフミテ モダシユク キズツキヤスキ キミトシルユヱ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10358
愛されて ゐると知りたる 寂しさよ 別れ來て一人 バスにゆらるる
アイサレテ ヰルトシリタル サビシサヨ ワカレキテヒトリ バスニユラルル

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10359
今一たび 夢を見むとも 願はねど 追ひつめて寂し 遠き日の思慕
イマヒトタビ ユメヲミムトモ ネガハネド オヒツメテサビシ トオキヒノシボ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10360
時へなば 忘れも得べし 思ひ出の 中にのみ澄む おもかげとして
トキヘナバ ワスレモウベシ オモヒデノ ナカニノミスム オモカゲトシテ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10361
姿勢崩さず 生きたしと思ひ 涙出づ 風募る夜半を 一人覺めゐて
シセイクズサズ イキタシトオモヒ ナミダイヅ カゼツノルヨワヲ ヒトリサメヰテ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10362
振返らず ゆくてのみを見よと 諭されき 寂しき時は 思ふかの人
フリカエラズ ユクテノミヲミヨト サトサレキ サビシキトキハ オモフカノヒト

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10363
なりゆきに まかす外なき あけくれよ つきとめがたし 人の心は
ナリユキニ マカスホカナキ アケクレヨ ツキトメガタシ ヒトノココロハ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10364
下草の 靑みそめたる 野を行きて むなしく何に すがらむとする
シタクサノ アオミソメタル ノヲユキテ ムナシクナニニ スガラムトスル

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10365
燃え盡きし いのちとも思ふ 夭死せし 友のノートの 歌寫しつつ
モエツキシ イノチトモオモフ ヨウシセシ トモノノートノ ウタウツシツツ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10366
生くる事が 負檐になりぬと 記しあり 死の数日前の 友が日記ぞ
イクルコトガ フタンニナリヌト シルシアリ シノスウジツマエノ トモノニッキゾ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10367
眉あげて 何に競ふと する我ぞ 寄り來れば犬も いとしかりけり
マユアゲテ ナニニキソフト スルワレゾ ヨリクレバイヌモ イトシカリケリ

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2


10368
隣の主婦に 貸しし若干の 錢の事を 氣にかけいます 母も貧しく
トナリノシュフニ カシシソコバクノ ゼニノコトヲ キニカケイマス ハハモマズシク

『朱扇』(朱扇社 1952.3) 第4巻3号 p.2