さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

朱扇

 
合歓の花        山霧を         微かに松の       防風林に        
女の死が        あたたかき       秘めもてる       いつとなく       
 
 
 

10316
合歓の花 木梢に高く そよぎつつ 秘かなるわが 思慕をいざなふ
ネムノハナ コヌレニタカク ソヨギツツ ヒソカナルワガ シボヲイザナフ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10317
山霧を 浴びて獨り佇つ 高原に やりどなく虚無の 思ひ湧きくる
ヤマギリヲ アビテヒトリタツ コウゲンニ ヤリドナクキョムノ オモヒワキクル

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10318
微かに松の 花粉こぼるる 夕まぐれ 又逢はむ日の 思ほゆるなり
カスカニマツノ カフンコボルル ユウマグレ マタアハムヒノ オモホユルナリ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10319
防風林に ひねもすけぶる 霧の雨 思ひ惑ひの 斷ちがたきかも
ボウフウリンノ ヒネモスケブル キリノアメ オモヒマドヒノ タチガタキカモ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10320
女の死が 解決となる 小説を よみ終へぬ旅のやどりの 夜の更けゆきて
オンナノシガ カイケツトナル ショウセツヲ ヨミオヘヌタビノヤドリノ ヨノフケユキテ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10321
あたたかき 雨となりたる 夜半さめて 又おちゆくか 一つ嘆きに
アタタカキ アメトナリタル ヨワサメテ マタオチユクカ ヒトツナゲキニ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10322
秘めもてる 思ひは告げず 別れ來て 霧の中に聞く 遠き汽笛を
ヒメモテル オモヒハツゲズ ワカレキテ キリノナカニキク トオキキテキヲ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2


10323
いつとなく 疲れまどろむ 夜の汽車に 恣なる 夢も顯ちつつ
イツトナク ツカレマドロム ヨノキシャニ ホシイママナル ユメモケンチツツ

『朱扇』(朱扇社 1951.8) 第3巻8号 p.2